渦巻銀河の渦巻はなぜ消えない?を解明する「密度波理論」
sorae.jp / 2020年3月17日 23時6分
【今日の天体紹介:NGC 3887】
この画像は「NGC 3887」と呼ばれる銀河です。「棒渦巻銀河」というタイプに属し、ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ「WFC3」により撮影されたものです。地球から見ると南の星座「コップ座」の方向、約6000万光年離れた場所に位置しています。この銀河はドイツ出身のイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルにより発見されたものですが、発見は今から200年以上も前の1785年12月31日です。NGC 3887は地球から見て渦巻の腕の形が見えやすい向きになっており、腕の構造や腕の中に存在する星を研究するのに格好のターゲットになっています。
銀河に限らず何かを観察・観測するときには、それがどのような形なのか?どのように動いているのか?といったことを調べることは基本的ですが重要なことの1つです。NGC 3887に限らず渦巻銀河の場合、回転速度を調べていくと内側にある星やガスのほうが外側にあるものよりも早く銀河を一周するような範囲があることがわかりました。そうすると、宇宙の長い歴史からするとほんのわずかな時間で銀河の腕はどんどんきつく巻き付いてしまい、銀河の腕はほとんど見えなくなってしまうと考えられます。しかし、私たちがよく見る渦巻銀河の画像ではもっと腕が開いた形をしています。このように(おおざっぱに言って)内側のほうが早く回転するにも関わらず、渦巻銀河の腕がずっと存在し続けられるのはなぜなのでしょうか?この問題は「巻き込みの困難」と呼ばれ、天文学者たちの長年の謎でした。
この問題を解く鍵となったのは1960年代に提唱された「密度波理論」でした。密度波理論では、銀河の腕に存在する天体は腕を横切るように常に入れ替わっており、密度の高いところ・低いところが模様(パターン)として見えているとされています。銀河にあるガスやダストは腕の部分にくると圧縮され、そこで動きがゆっくりになってしまうのです。 ちょうど車が渋滞に巻き込まれると速度が遅くなって車が詰まり(密度が高くなって「圧縮された」とも言えます)、それから徐々に渋滞から抜けていく様子と似ています。 渦巻の腕の性質が密度波理論ですべて説明できるわけではないようですが、大きな成果を上げることはできたと言えるでしょう。
関連:
こちらを見つめ返す目のよう。リングが際立つ均整のとれた銀河の姿
秒速480kmで回転する銀河「UGC 12591」
Credit: ESA/Hubble & NASA, P. Erwin et al.
Source: ESA/Hubble
文/北越康敬
この記事に関連するニュース
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影 “レチクル座”の渦巻銀河「NGC 1559」
sorae.jp / 2024年9月20日 17時56分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“おとめ座”の渦巻銀河「NGC 5668」
sorae.jp / 2024年9月17日 21時20分
-
銀河団に現れた“宇宙のクエスチョンマーク” ウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年9月16日 20時52分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影 “ぼうえんきょう座”の渦巻銀河「IC 4709」
sorae.jp / 2024年9月3日 21時3分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「さんかく座銀河」の中心付近
sorae.jp / 2024年8月26日 20時55分
ランキング
-
1「SHOGUN」エミー賞受賞を喜ぶ人と抵抗ある人 日本人がアメリカで最多受賞した本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
2「高齢者に炭水化物は毒」は大ウソである…長寿国では「パン、そば、うどん」をもりもり食べている事実
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 15時15分
-
3朝食前に歯を磨かない人は「糞便の10倍の細菌」を飲み込んでいる…免疫細胞をヨボヨボにする歯周病菌の怖さ
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 14時15分
-
4「ぜんたーい、止まれ!」その入場行進なんのため? 元体育主任が語る、運動会で廃止すべきこと3つ
オールアバウト / 2024年9月20日 20時35分
-
5「来来亭のラーメン」を16年以上毎日食べ続ける男性を直撃。体重の増減や健康診断の結果も教えてもらった
日刊SPA! / 2024年9月19日 15時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください