2024年の有人月面探査では「ゲートウェイ」が使われないかもしれない
sorae.jp / 2020年3月21日 10時58分
NASAが進めている「アルテミス」計画では、1972年の「アポロ17号」以来となる有人月面探査ミッション「アルテミス3」の実施が2024年に予定されています。宇宙飛行士は月を周回する軌道に建設される月周回有人拠点(ゲートウェイ)で着陸船に乗り換えることが計画されているのですが、アルテミス3ではゲートウェイが使われない可能性が報じられています。
■2024年の有人着陸実施を遅らせかねないリスクの回避![](https://sorae.info/wp-content/uploads/2020/03/20190523_initial-gateway-may-2019.jpg)
月周回有人拠点「ゲートウェイ」(左)に接近する「オリオン」宇宙船(右)を描いた想像図。ゲートウェイには組み立て済みの着陸船もドッキングしている(Credit: NASA)
SpaceNews.comなどによると、3月13日に開かれたNASA諮問委員会(NAC)の科学委員会において、NASAの有人探査運用局長Douglas Loverro氏が、ゲートウェイを使用せずにアルテミス3を実施する考えであることを述べています。その理由としてLoverro氏は、2024年という期限が定められているアルテミス3のスケジュール通りの実施に対するリスクをあげています。
アルテミス計画に使われる新型宇宙船「オリオン」、オリオンを打ち上げる「SLS(スペース・ローンチ・システム)」、宇宙飛行士を月面に送る有人月着陸船、そして月周回軌道の拠点となるゲートウェイといったハードウェアはその多くが開発中であり、いずれかの開発が難航すると計画全体に遅れをもたらす可能性があります。
特にLoverro氏はゲートウェイを構成するモジュールのひとつ「PPE(Power and Propulsion Element)」に言及しています。これまでのスケジュールに従えば、ゲートウェイの推進と電力供給を担うPPEはアルテミス3に先立って月周回軌道に投入される予定ですが、Loverro氏は高出力の電気推進エンジンを採用するPPEの開発・製造は遅延する可能性が高いと判断しています。
ただし、アルテミス計画からゲートウェイそのものが除外されるわけではなく、あくまでも2024年のアルテミス3ミッションに間に合わせる必要はないという判断です。Loverro氏も持続的な月面有人探査にはゲートウェイが欠かせないと強調しており、もともと2028年が予定されていた有人月面探査再開が4年前倒しされたことによるタイトなスケジュールから、ゲートウェイの開発と建造を解放する狙いもあるようです。
■着陸船の構成も見直される可能性![](https://sorae.info/wp-content/uploads/2020/03/HLS-onSLS_hi-res.jpg)
2019年にボーイングが提案した有人月着陸船を描いた想像図。上昇モジュールと下降モジュールからなる着陸船をSLSで打ち上げる(Credit: Boeing)
ゲートウェイを使わない場合、アルテミス3ではオリオンと有人月着陸船が直接ドッキングして宇宙飛行士が乗り移ることになると思われますが、Loverro氏は着陸船の構成が再検討される可能性にも言及しています。
アルテミス計画の着陸船は、宇宙飛行士が乗り込み月面からゲートウェイに戻るための「上昇モジュール」、上昇モジュールを載せて月面に着陸するための「下降モジュール」、ゲートウェイを離れて着陸に備えた軌道へ移動するための「トランスファーモジュール」、以上の3つから構成される予定です。計画ではこれら3つのモジュールを民間のロケットを使って別々に打ち上げ、ゲートウェイで1つの着陸船に組み立てることになっていますが、Loverro氏は今まで実施されたことがないこの方法も避けたいと述べています。
なお、昨年11月、組み立て式ではなく1回で打ち上げることが可能で、オリオンと直接ドッキングもできる着陸船をNASAに提案したことをボーイングが明らかにしています。もしも着陸船の組み立て式構成が見直されることになった場合、ボーイング案のように最初から完成した状態で打ち上げられる構成の着陸船が採用されることになるかもしれません。
Image Credit: NASA
Source: SpaceNews.com / Spaceflight Now / Boeing
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
人類を再び月へ「アルテミスII」ケネディ宇宙センターへ向け“驚愕の方法で”出荷される
乗りものニュース / 2024年7月16日 18時12分
-
【鑑賞前の予習用に】“人類最大の偉業”アポロ11号の月面着陸をめぐる宇宙開発史を紐解く
映画.com / 2024年7月3日 14時0分
-
NASAが2030年で運用を終えるISSの軌道離脱用宇宙機開発でスペースXと契約
sorae.jp / 2024年6月27日 17時35分
-
ボーイング新型宇宙船「スターライナー」地球帰還は6月26日以降の予定
sorae.jp / 2024年6月22日 11時16分
-
月の裏側に着陸した中国の月探査機「嫦娥6号」をアメリカの月周回衛星「LRO」が撮影
sorae.jp / 2024年6月20日 9時17分
ランキング
-
1なぜ?「N-BOX」新型登場でも10%以上の販売減 好敵「スペーシア」と異なる商品力の改め方
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時30分
-
2ドラマ「西園寺さん」ヒットの予感しかない3理由 「逃げ恥」「家政夫ナギサさん」に続く良作となるか
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 20時0分
-
3丁寧な言葉遣いで一見おとなしい人ほど陰湿攻撃がエグい…「目に見えない攻撃」を繰り出す人「6パターン」
プレジデントオンライン / 2024年7月16日 15時15分
-
4月々のスマホ代を「高いと感じる」…「2000円もすることに驚いた」「安いプランなのに高い」格安プランに乗り換える?
まいどなニュース / 2024年7月16日 19時45分
-
5第171回芥川賞は朝比奈秋さんと松永K三蔵さんがダブル受賞
産経ニュース / 2024年7月17日 18時4分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)