最期を迎えた恒星がふくらませた直径1.5光年のガスの泡
sorae.jp / 2020年5月13日 22時37分
惑星状星雲「Abell 36」(Credit: ESO)
■今日の天体紹介:惑星状星雲Abell 36淡い赤にアクセントとして青が添えられた雲のように見えるこの天体は、おとめ座の方向およそ1400光年先にある惑星状星雲「PN A66 36」。天文学者のジョージ・エイベルがまとめた惑星状星雲のカタログをもとにした「Abell 36」の通称でも知られています。星雲の直径はおよそ1.5光年。ヨーロッパ南天天文台(ESO)によって撮影されたこの画像からは、夕暮れ時の空に広がる美しい雲のような、どこか幻想的な印象を受けます。
太陽のように比較的軽い恒星は超新星爆発を起こすことはなく、赤色巨星になってからは周囲にガスを放出しつつ、白色矮星に進化していくとされています。このとき放出されたガスは恒星の周囲へと広がっていき、白色矮星になりつつある熱い中心星から発せられた強い紫外線によって電離し、水素は赤、酸素は青といったように、淡い光を放ちます。
こうして生み出された惑星状星雲は、宇宙のタイムスケールからすれば短命な存在です。Abell 36の中心星は表面温度が摂氏7万度以上に達するとみられていますが、表面温度が下がるにつれてガスを電離させる紫外線の放射が弱まるとともに、ガスそのものも星間空間に拡散してしまうため、惑星状星雲が観測できるのは1万年ほどの期間とされています。太陽も数十億年後にはこのような惑星状星雲を形成するとみられていますが、1万年のあいだにその淡い輝きが誰かの目を楽しませたり、はるか未来の天文学者に新たな知識を与えたりすることになるのでしょうか。
この画像はESOのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」によって撮影され、2019年1月22日に公開されました。
関連:偶然が生み出したダイヤモンドリング。惑星状星雲と恒星のコラボ
Image Credit: ESO
Source: ESO / APOD
文/松村武宏
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