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炭素で作った極薄ソーラー・セイルが初期テストに成功

sorae.jp / 2020年6月1日 17時5分


炭素でできた極薄の物質が、宇宙船のソーラー・セイルとして使われるようになるかもしれません。
ソーラー・セイルは宇宙船の推進力として使うことが期待されている技術です。これまでの宇宙船や宇宙探査機では燃料を使って推進していましたが、宇宙船の打ち上げや長い間その旅を続けるには燃料の重さが課題となります。ソーラー・セイルは太陽などからの光を受けて推進力とするため燃料を必要とせず、その分だけ宇宙船を軽量化することができます。ソーラー・セイル自体は既に使われている技術ですが、これまでのソーラー・セイルは「ポリイミド」という物質や、ポリエステルのフィルムを使って作られていました。

新しいソーラー・セイルの候補となる物質は「グラフェン」と呼ばれる炭素でできたもので、はるかに軽い物質です。研究者たちはグラフェンがソーラー・セイルとして活用できるかを実験するため、わずか3ミリのサイズのソーラー・セイルを用意しました。実験を行うには宇宙のように空気や重力の影響を受けない環境を用意しなければなりません。そこで、ドイツのブレーメンにある高さ100メートル余りの実験設備が使われました。

微小重力の環境を作る実験棟。Credit: ESA

このタワーの内部(下図)は真空状態となっており、タワーの上部からソーラー・セイルを落とすことでフリーフォールのような状態になり、実際に地球上から抜け出すことなく重力の影響を打ち消すことができます。そこにレーザー光を当て、ソーラー・セイルのような役割ができるかどうかを検証します。

実験棟の内部。Credit: ESA

1ワットのレーザー光を当てると、ソーラー・セイルは加速します。その「加速度」(ある時間にどれだけ速度が変わるか)はわずかなものですが、太陽光を当て続ければ加速し続けることができ、どんどん速くしていくことができます。

初期の実験は成功し、ソーラー・セイルの素材となりうることを示すことができたということです。この「グラフェン・セイル」チームのリーダーであるSCALE Nanotech社のSantiago Cartamil-Bueno氏は「グラフェンを作るのは比較的シンプルで、キロメートル級のサイズのセイルを作ることもできます。もっとも、そのサイズの帆を打ち上げ後に宇宙で広げるのは大きなチャレンジです。」と語っています。

現在SCALE Nanotech社は宇宙で行う最終的なテストに向け、パートナーとなる企業を探しているところです。巨大な実験棟にも驚きますが、こうしたソーラー・セイルが実用化されれば探査機が行ける範囲も大きく広がりそうです。

 

Image: ESA
Source: ESA
文/北越康敬

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