金星表面の高解像度地形図作成を目指す次期ミッション候補「VERITAS」
sorae.jp / 2020年7月10日 11時44分
今年の2月に選定されたNASAの「ディスカバリー計画」における4つの次期ミッション候補のひとつ「VERITAS」は、金星表面の高解像度な地形図の作成などが計画されているミッションです。その内容をNASAのジェット推進研究所(JPL)が解説しています。
■金星のみならず地球についても理解を深めるためのミッションJPLのSuzanne Smrekar氏が率いる「VERITAS(Venus Emissivity, Radio Science, InSAR, Topography & Spectroscopy)」は、合成開口レーダー(SAR)をはじめとした複数の観測機器を搭載した探査機を金星の周回軌道に送り込み、分厚い雲の下に広がる地表の観測や重力場の測定を通してその内部を探ることを目的としています。
最先端の強力なレーダーは金星表面の高解像度かつ立体的な地形図の作成を可能とするだけでなく、2回分の観測データを比較することで地表の変化を検出する干渉SAR解析(InSAR)にも利用することができます。干渉SAR解析は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち2号」の観測データ解析などでも利用されている技術で、今まさに金星で起きている地質活動を捉えることが可能となります。
地球の場合、プレート運動と火山活動による揮発性物質(水、窒素、二酸化炭素など)の循環や、大陸の形成と侵食が、大気や海の組成に影響を与えています。「地球と金星は同じようにスタートを切ったのに、全く異なる歴史を歩みました。その理由は解明されていません」と語るSmrekar氏は、そのサイズから「地球の双子」と形容されることもある金星の地質活動を通して、地球や地球に似た惑星の理解を深めたいと考えています。
Smrekar氏らは、金星の地表はプレート運動が始まった頃の地球に似ていると考えており、金星の観測を通して地球のプレート運動がどのようにして始まったのかを垣間見ようとしています。VERITASは過去の探査機では捉えられなかったような小さな地形も識別できるとされており、地表の特徴をもとに断層を検出したり、干渉SAR解析によって活動中の断層を発見したりすることが計画されています。
また、金星の「テッセラ」(tessera、テセラ)と呼ばれる標高が高く複雑な地形が広がる領域は、地球の大陸に似ているのではないかとも考えられています。地球における大陸の形成には水が重要な役割を果たしたとみられていることから、VERITASの観測によって過去の金星における湿潤な時期についての情報が得られることも期待されています。このほかにも、VERITASの分光計によって噴出してから間もない溶岩が検出されれば、現在も継続の可能性が指摘されている火山活動についての答えが得られるかもしれません。
Smrekar氏は「金星の謎を解き明かすには、惑星規模で地質と大気を進化させる原動力となる内部を観察しなければなりません。金星と地球は本質から異なるのでしょうか、それとも『双子』の違いは表面的なものだけなのでしょうか?」とコメントしています。ディスカバリー計画の次期ミッションは、来年2021年の夏に4つの候補から最大2つのミッションが選定される予定です。
関連:ボイジャー以来のトリトン観測を目指す探査計画候補「トライデント」
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
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