ガンマ線バーストの観測結果が一般相対性理論の正しさを裏付け
sorae.jp / 2020年7月12日 20時0分
日本時間2019年1月15日、南天の「ろ(炉)座」の方向で「GRB 190114C」と呼ばれるガンマ線バーストが検出されました。今回、このガンマ線バーストの観測データをもとに、アインシュタインの「一般相対性理論」を精密に検証することができたとする研究成果が発表されています。
■光の速度はエネルギーに依らず真空中で一定であることを観測データから確認東京大学宇宙線研究所をはじめとしたMAGIC国際共同研究チームは、スペインのカナリア諸島にある大気チェレンコフ望遠鏡「MAGIC」によるGRB 190114Cの観測データを分析したところ、光の速度が真空中において一定であることが確認され、一般相対性理論の正しさを裏付ける結果が得られたと発表しました。
研究チームによると、質量とエネルギーの時空間との相互作用を説明する一般相対性理論はこれまでにも繰り返し検証が重ねられており、光の速度が一定だと仮定した場合に検証結果が矛盾なく説明できることがわかっているといいます。いっぽう、より根本的な理論の可能性があるとして重力を量子力学的に記述する「量子重力理論」が幾つか提唱されており、一部の理論では光の速度がエネルギーに依存して変化する(ローレンツ不変性の破れ)とされています。量子重力理論で予想されている光速度の変化はとても小さく、もしも実験によって検出しようとすれば、かなりの長距離を移動してきた光を利用しなければならないといいます。
そこで注目されたのがガンマ線バーストです。強力な爆発現象であるガンマ線バーストは量子重力理論にもとづく大きな影響を光に与えることが予想されるだけでなく、遠方で発生した場合には長い距離を旅した末に光が地球へと届くからです。およそ45億光年先で発生したとされるGRB 190114Cの観測データを研究チームが詳しく分析したところ、ガンマ線が到着する時間にはエネルギーに依存した変化がみられず、前述のように光速度が真空中では一定であることを示す結果が得られたとしています。
MAGICのような大気チェレンコフ望遠鏡は、高エネルギーのガンマ線が地球の大気中で発生させるチェレンコフ光を捉えることで、ガンマ線の発生源を観測します。研究チームは、現在カナリア諸島などで建設が進められている「チェレンコフ・テレスコープ・アレイ(CTA)」によるさらに遠方のガンマ線バーストの観測を通して、より優れた感度で量子重力理論の検証が行える可能性があるとしています。
関連:観測史上最大のエネルギーで放射されたガンマ線バーストを観測
Image Credit: MAGIC Collaboration
Source: 東京大学宇宙線研究所
文/松村武宏
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