月が形成されたのはおよそ44億2500万年前? 従来の説よりも少し若い
sorae.jp / 2020年7月14日 23時0分
地球の天然の衛星である月の形成をめぐっては、初期の地球に火星ほどのサイズの原始惑星が衝突したことを原因とする「ジャイアント・インパクト(巨大衝突)説」が有力視されています。今回、巨大衝突によって月が形成された時期を割り出したとする研究成果が発表されています。
■形成直後に月を覆ったマグマの海、固まるまで約2億年を要したかMaxime Maurice氏(DLR:ドイツ航空宇宙センター)らの研究グループは、巨大衝突によって形成されたばかりの月を覆っていたマグマオーシャンが固まるまでの過程を分析した結果、月が形成されたのは今からおよそ44億2500万年前(不確実性は2500万年)であり、従来仮定されてきた45億1000万年前よりも8500万年ほど遅かったことが明らかになったとする研究結果を発表しました。
研究グループによると、月が形成された原因については巨大衝突説が支持されるようになったものの、形成された正確な時期は特定できていなかったとしており、その理由として月のマグマオーシャンをあげています。巨大衝突から数千年以内という短期間で形成されたとみられる月は当初深さ1000km以上のマグマオーシャンに覆われていたと考えられており、その表面は早い段階で冷えて地殻が形成され始めたものの、内部はしばらくのあいだ溶けた状態が続いていたとみられています。月の年齢を求める際には、このマグマオーシャンが完全に結晶化するまでの期間が重要だといいます。
そこで研究グループが新しいモデルを用いて月のマグマオーシャンが冷えて固まるまでの期間を調べたところ、約2億年を要するという結果が得られました。研究に参加したNicola Tosi氏(DLR)は、従来の研究で計算されていた期間はこれよりも短い約3500万年だったとしており、今回の研究ではその6倍近い期間が示されたことになります。
また、マグマオーシャンが固まっていく過程で形成されるケイ酸塩鉱物の組成が変化する様子を研究グループが分析した結果、時間とともにマグマオーシャンの組成が大きく変化することが明らかになったといいます。この発見によって、異なる組成の岩とマグマオーシャンの進化の段階を結びつけることが可能となり、マグマオーシャンの進化が始まった時期(すなわち月が形成された時期)まで遡ることができたとしています。
この「およそ44億2500万年前」という時期は、ウラン・鉛法によって求められた地球のコアの形成時期に一致すると研究グループは指摘しています。研究に参加したThorsten Kleine氏(ミュンスター大学)は「月の年齢と地球のコアの形成を初めて結びつけることができました」とコメントしています。
Image Credit: Ron Miller
Source: DLR
文/松村武宏
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