活動銀河核のX線を弱めたのはブラックホールに破壊された恒星か?
sorae.jp / 2020年7月17日 23時0分
ブラックホールに吸い込まれていくガスは高速で周回しながら降着円盤を形成しており、ブラックホールの周辺では高温のプラズマでできたコロナが生じていると考えられています。ブラックホールそのものを見ることはできませんが、その周囲にある降着円盤やコロナから放射された電磁波を捉えることで、間接的に観測することが可能です。今回、ある銀河の活動銀河核から放射されるX線が急激に弱まった現象について、超大質量ブラックホールに破壊された恒星が原因ではないかとする研究成果が発表されています。
■恒星の残骸が降着円盤に衝突し、ブラックホールの「食事」を中断させたか「りゅう座」の方向およそ3億光年先にある「1ES 1927+654」は、活動銀河核を持つ銀河(セイファート1型)のひとつです。この銀河では2年前、X線の強さが約40日間で1万分の1まで弱まり、その約100日後には弱まる前の20倍も強くなるという大きな変化が観測されていたといいます。
Claudio Ricci氏(ディエゴ・ポルタレス大学)らの研究グループは、1ES 1927+654で観測されたX線の変化はブラックホールに吸い込まれる物質が一時的に途絶えたことで生じたものであり、ブラックホールの重力がもたらす潮汐作用によって破壊(潮汐破壊)された恒星の残骸と降着円盤の相互作用がその原因として考えられるとする研究結果を発表しました。
発表によると、ブラックホールコロナからの放射はブラックホールに吸い込まれていく物質の増減にあわせて明るくなったり暗くなったりすることが知られているものの、その変化は最大100倍ほどとされています。1ES 1927+654で観測されたX線の大幅な減光についてRicci氏は「最初は観測データに問題があるのではないかと思いました。本物だとわかったときには興奮しましたが、何を扱っているのかさえわかりませんでした。このような現象を私たちは見たことがなかったのです」と振り返ります。
いっぽう、X線の減光が観測される数か月前、1ES 1927+654が可視光(人の目で見える光)でかなり明るくなった様子が観測されていたといいます。分析を進めた研究グループは、超大質量ブラックホールに接近したために破壊された恒星の残骸が降着円盤に衝突し、ブラックホール周辺の物質を分散させたことで物質の供給が一時的に断たれた結果、X線の放射が大幅に弱まった可能性を見出しました。X線で暗くなる数か月前に観測された可視光の増光は、恒星の残骸と降着円盤が衝突したことで生じた可能性があるとされています。
ただ、国際宇宙ステーション(ISS)の中性子星観測装置「NICER」やガンマ線観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」などによる観測では、X線の減光がスムーズではなかったことがわかったといいます。NICERは低エネルギーのX線が日々変動する様子を捉えており、極端なケースではわずか8時間で100倍もの変化が確認されていることから、研究グループは恒星の残骸以外の原因が存在する可能性にも言及。超大質量ブラックホールとその周辺が減光の前後でどう変わったのかを知るためにも、観測を継続するとしています。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
吾妻鏡に記録が残る超新星爆発、その残骸が再び活性化 東大の研究
財経新聞 / 2024年7月13日 10時12分
-
この指輪のような天体の正体は? ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年7月9日 20時33分
-
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡、133億光年かなたの星団を捉える
共同通信PRワイヤー / 2024年7月4日 11時0分
-
現存する望遠鏡だけで「ホーキング放射」をブラックホールから検出できる日が来るかもしれない
sorae.jp / 2024年6月26日 11時0分
-
JAXA、合体間近の超大質量ブラックホールからのシグナルを解析
財経新聞 / 2024年6月22日 10時24分
ランキング
-
1「ユニクロ・GU・COSのTシャツ」全部買ってわかった“本当にコスパが高い傑作アイテム”
日刊SPA! / 2024年7月17日 18時37分
-
21日5分で二重アゴ&首のシワを解消!魔法の顔筋トレ「あごステップ」HOW TO
ハルメク365 / 2024年7月17日 22時50分
-
3去勢された「宦官」は長寿集団だった…女性の寿命が男性よりもずっと長い理由を科学的に解説する
プレジデントオンライン / 2024年7月18日 8時15分
-
4イケアのモバイルバッテリーに“発火恐れ” 製造不良で一部自主回収…… 海外では事故も発生
ねとらぼ / 2024年7月17日 20時10分
-
5ロシア軍の対空ミサイルを「間一髪で回避」ウ軍のドローンが“マトリックス避け”を披露 その後反撃
乗りものニュース / 2024年7月17日 11時42分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください