NASAの探査衛星、限られた観測データをもとに620光年先の系外惑星を発見
sorae.jp / 2020年7月25日 17時0分
2018年4月に打ち上げられたNASAの系外惑星探査衛星「TESS」は、主星(恒星)の手前を系外惑星が横切る「トランジット」を起こした時の主星のわずかな明るさの変化を利用する「トランジット法」を使って系外惑星を検出しています。今回、TESSが1回だけ検出したトランジットの再検出に成功し、系外惑星を発見することができたとする研究成果が発表されています。
■直径と質量は土星に近く、表面温度は摂氏およそ160度と推定Samuel Gill氏(ウォーリック大学)らの研究グループは、TESSが「くじら座」の方向およそ620光年先にある恒星「NGTS-11」において検出したトランジットをもとに追加観測やデータの分析を行った結果、NGTS-11を約35日で周回する系外惑星「NGTS-11 b」が見つかったと発表しました。研究グループによると、TESSが1回だけトランジットを検出した後に発見に至った系外惑星は、NGTS-11 bが初めてだといいます。
4台のカメラを搭載するTESSは24度×96度の範囲を27日間観測し続けることで、広範囲で起きるトランジットを捉えることができます。しかし、ある方向での観測期間が過ぎると別の方向にカメラが向けられてしまうため、主星を27日以上の周期で公転する系外惑星のトランジットは検出できても1回だけとなり、それ以上の観測データが得られないという制約があります。
そこで研究グループはチリのパラナル天文台にある「次世代トランジットサーベイ(NGTS)」の観測設備を使い、TESSによって2018年9月29日にトランジットが検出されたNGTS-11の追加観測を試みました。79夜に渡る観測の結果、TESSの検出から390日後となる2019年10月24日にトランジットを再検出することに成功。NGTS-11の性質や系外惑星の公転にともなうふらつきなども考慮して分析したところ、前述のように公転周期が約35日の系外惑星NGTS-11 bの存在が明らかになったといいます。
研究グループによると、NGTS-11 bの直径は木星の約0.8倍、質量は木星の約0.3倍で、土星に近い直径と質量を持つといいます。また、NGTS-11 bの平衡温度(※)は摂氏およそ160度と算出されていて、地球よりも高温ではあるものの、表面温度が摂氏2000度を超えるものもあるようなホットジュピターに比べれば低いとされています。
※…大気の存在を考慮せず、主星から受け取るエネルギーと惑星から放射されるエネルギーだけを考慮した温度
トランジット法では公転周期が短く直径が大きい系外惑星ほど検出されやすいため、主星に近い軌道を周回する高温のホットジュピターは比較的見つかりやすい系外惑星と言えます。いっぽう今回の研究では、TESSによって1回だけ検出されたトランジットの観測データをもとに、ホットジュピターよりも低温で木星よりも小さな系外惑星を発見することに成功しています。Gill氏は「TESSが1回だけ検出したトランジットの観測データはまだ何百もあります。同じ手法を利用することで、ゴルディロックスゾーン(ハビタブルゾーン)を周回するものも含む、さまざまなサイズの系外惑星を発見できるはずです」とコメントしています。
Image Credit: ESO/M. Kornmesser
Source: ウォーリック大学
文/松村武宏
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