銀河団ガスに自らのガスを引きはがされている棒渦巻銀河「NGC 4848」
sorae.jp / 2020年7月28日 22時54分
この画像はハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「NGC 4848」という銀河です。その中でも「棒渦巻銀河」という種類に分類され、少しわかりにくいかもしれませんが中心部に棒状の構造があります。画像では銀河の内側が青白く輝いていますが、これらは数十万の若い星々を捉えたものです。また、渦巻の腕が銀河の外側のほうにまで微かに広がっている様子も見て取れます。
NGC 4848は1865年、ドイツの天文学者ハインリヒ・ルイス・ダレストによって発見されました。彼はフレイア(76 Freia)という小惑星や多くの銀河を発見したほか、海王星の発見にも貢献した人物です。NGC 4848はかみのけ座の方向にあり北半球から観測することができるため、大きな望遠鏡があれば見ることができるかもしれません。
ところで、NGC 4848は「かみのけ座銀河団」と呼ばれる銀河の集団の一員でもあります。ハワイで稼働する日本の「すばる望遠鏡」などの観測では、NGC 4848が銀河団の中心方向とは逆向きに尾を引いているような姿が報告されています。これは、銀河団の内部が「銀河団ガス」という数千万度から1億度の高温ガスで満たされており、NGC 4848がこの銀河団ガスの中を運動することによって「ラム圧」(動圧)という圧力を受け、自身のガスが引きはがされてしまったことによるものと言われています。NGC 4848は星形成率が高い(星が活発に生まれている)のですが、それはこのラム圧の受け始めの頃に銀河内の星間物質が圧縮され、星が生まれやすい状況が作られたためかもしれません。「尾」はまばらにではありますがNGC 4848自身のサイズよりも長く、一説にはその長さからNGC 4848が秒速およそ1300キロメートルもの速さで運動しているのではないかと推測されています。
関連:
高速移動する銀河に生じる「剥ぎ取り」現象
銀河団の中心に吸い込まれる銀河が放出する物
星形成材料を剥ぎ取られ、崩壊していく銀河
時速87万キロで移動する銀河 M86
Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gregg
Source: ESA/Hubble
文/北越康敬
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