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NASAが巨大な気球で成層圏に望遠鏡を運び上げるミッションを準備中

sorae.jp / 2020年7月28日 10時30分

成層圏を飛行する気球を描いた想像図。ASTHROSで用いられる気球は直径が150mに達する(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab/Michael Lentz)

望遠鏡が発明されてからしばらくのあいだ、人類は地球の大気越しに天体を観測してきました。現在では大気の影響を受けない宇宙望遠鏡が幾つも打ち上げられていますが、宇宙には届かないけれど地上よりも高い成層圏まで気球で運ばれる望遠鏡の開発が、NASAのジェット推進研究所(JPL)において進められています。

■南極大陸上空の成層圏に打ち上げられた望遠鏡で星形成領域や銀河を観測

JPLのエンジニアJose Siles氏が率いる「ASTHROS」(※)と呼ばれるこのミッションでは、気球に吊り下げられた望遠鏡を南極大陸のマクマード基地から高度40kmの成層圏に向けて打ち上げ、「イータカリーナ星雲」や渦巻銀河「M83」などを遠赤外線で観測することが計画されています。気球の打ち上げは2023年12月に実施される予定で、3~4週間後のミッション終了時には望遠鏡がゴンドラごと気球から切り離され、パラシュートで降下した後に地上で回収されます。

※…”Astrophysics Stratospheric Telescope for High Spectral Resolution Observations at Submillimeter-wavelengths”の略

高度100km以上(80km以上とする場合も)とされている宇宙空間には届きませんが、JPLによると、大気に遮断されてしまう波長の光(電磁波)を捉えるにはこの高度でも十分だといいます。軽量に設計されてはいるものの、直径2.5mのパラボラをはじめ鏡、レンズ、検出器などから構成される望遠鏡を成層圏まで運び上げるために、ASTHROSでは直径150mまでふくらむ巨大な気球が用いられます。

赤外線による観測では熱の影響を抑えるために観測装置が低温に冷やされますが、ASTHROSではソーラーパネルから供給される電力を利用することで、検出器の温度を摂氏マイナス268.5度の極低温に保つといいます。このような装置の冷却には液体ヘリウムを用いることが多いものの、保管容器が必要な液体ヘリウムを利用する場合よりも軽量で済むことと、ミッションの動向が液体ヘリウムの残量に左右されずに済むことから、ASTHROSでは電力による冷却方法が採用されています。

気球というと古いテクノロジーのように思えますが、宇宙でのミッションと比べて低コストかつ短い準備期間で実施できるメリットがあり、NASAでは大西洋に面したワロップス飛行施設(ワロップス射場)において30年ほどに渡り気球が運用され続けてきました。なお、今年の6月には9人乗りの成層圏気球による空の旅の計画が、米スペース・パースペクティブ社から発表されています。

 

関連:成層圏から見下ろす大地と海。米企業が宇宙を感じられる気球の旅を計画中(2020年6月28日)

Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab/Michael Lentz
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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