アルマ望遠鏡が検出した温かい塵、超新星1987Aが残した中性子星の存在を示す可能性
sorae.jp / 2020年7月31日 22時55分
「超新星1987A(SN 1987A)」は1987年2月におよそ16万3000光年離れた大マゼラン雲で観測された超新星爆発で、飛来したニュートリノが当時岐阜県の神岡鉱山跡で稼働していたニュートリノ検出器「カミオカンデ」によって検出されました。今回、SN 1987Aが中性子星を残した可能性を示す2つのグループによる研究成果が紹介されています。
■アルマ望遠鏡の観測で温かい塵の集まりを発見、中性子星に関する理論的予測を裏付け超新星爆発の際には中性子星やブラックホールのようにコンパクトで高密度な天体が形成されると考えられています。SN 1987Aの場合はカミオカンデでニュートリノが検出されたことから、爆発後には中性子星が残されたものと予想されてきたといいます。
Phil Cigan氏(カーディフ大学)らの研究グループは、チリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡」によって2014年に見つかっていたSN 1987Aの塵をさらに高い解像度で観測したところ、塵の一部が周囲よりも温かくなっていることを発見しました。その位置は中性子星が存在すると予想される場所に一致するといい、研究グループでは超新星爆発にともなって形成された中性子星が塵を高温に加熱している様子が観測されたものと考えています。
Cigan氏らの研究成果は昨年11月にThe Astrophysical Journalに掲載されましたが、研究に参加した松浦美香子氏(カーディフ大学)は、中性子星によって塵が加熱されているにしては明るく観測されすぎているのではないかと「不思議に思っていました」といいます。そんな折、Dany Page氏(メキシコ国立自治大学)らの研究グループから、非常に若い中性子星が存在していれば観測された明るさが説明できるとする研究成果が発表されました。
Page氏によると、SN 1987Aにおける温かい塵の集まりの発見は、中性子星に対する理論的な予測の正しさを裏付けるものだといいます。たとえば、超新星爆発から間もない中性子星の温度は摂氏およそ500万度と予想されており、Cigan氏や松浦氏らが観測した塵の温度を説明できるといいます。
また、超新星爆発に関するシミュレーションでは形成された中性子星が爆発によって秒速数百kmの速度で弾き飛ばされ移動する可能性が示されているといいますが、SN 1987Aで観測された温かい塵の集まりの位置は「ハッブル」宇宙望遠鏡やX線観測衛星「チャンドラ」によって観測されているリングの中心からやや外れたところにあり、30年余りのあいだに中性子星が移動したことを示しているといいます。
なお、両グループによる研究成果は中性子星を直接観測することで確かめられると予想されますが、塵やガスが晴れ上がって中性子星を観測できるようになるには、もう数十年ほどかかると予想されています。
Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), P. Cigan and R. Indebetouw; NRAO/AUI/NSF, B. Saxton; NASA/ESA
Source: 国立天文台 / NRAO
文/松村武宏
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