火星に数多く存在する谷、氷床の下の水流によって形成された可能性
sorae.jp / 2020年8月7日 11時17分
■古代の火星は温暖ではなく寒冷で、氷床に覆われていた可能性を示す
Anna Grau Galofre氏(アリゾナ州立大学)らの研究グループは、火星の地表に存在する幾つもの谷がどのようにして形成されたのかを分析した結果、その多くが初期の火星の地表を覆っていた氷床の下を流れる水によって刻まれていたとする研究成果を発表しました。
研究グループによると、火星南部の高地に数多く存在する谷は、初期の火星の地表を流れていた川によって侵食された地形だと解釈されてきたといいます。しかしGrau Galofre氏は、火星の谷にはさまざまな特徴があり、それはまるで川や氷河やそのほかの原因といった様々なプロセスによって形成される地球の谷のようだと指摘します。
研究グループが特に注目したのは、氷床の下を流れる水の侵食によって形成される、地球の北極圏にあるデボン島でみられるものに似た谷が火星にも存在することでした。新しいアルゴリズムを用いて火星で見つかっている1万以上の谷を分析したところ、地表を流れる水の侵食によって形成されたものはほんの一部にすぎず、谷のほとんどが氷床の下を流れる水の流路として形成された可能性が示されたといいます。
初期の火星の気候については温暖だったとする説と寒冷だったとする説があります。今回の研究成果は、谷が形成された頃の火星南部の高地が氷床に覆われていた可能性を示しており、初期の火星が寒冷だったとする説と矛盾しない結果となっています。
また、もしも火星に生命が誕生していた場合、地表を覆う氷床は生命の存続にとって好条件だったかもしれません。研究グループは、氷床によってその下の水が保護されるとともに、火星が磁場を失ってからも氷床が放射線を防ぐシェルターとして機能した可能性に言及しています。
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Image Credit: Cal-Tech CTX mosaic and MAXAR/Esri
Source: アリゾナ州立大学 / ウェスタンオンタリオ大学
文/松村武宏
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