ビッグバンから9億年後の宇宙で超大質量ブラックホールを取り囲む6つの銀河
sorae.jp / 2020年10月2日 22時30分
イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のMarco Mignoli氏らの研究グループは、初期の宇宙において超大質量ブラックホールを取り囲むように存在していた6つの銀河が観測されたとする研究成果を発表しました。今回の成果は、天の川銀河をはじめとした多くの銀河の中心に存在するとされる超大質量ブラックホールがどのように成長してきたのか、その過程を理解する助けになるかもしれません。
研究グループによると、今回ESO(ヨーロッパ南天天文台)の「超大型望遠鏡(VLT)」などを使って観測された6つの銀河と超大質量ブラックホールは、ビッグバンから9億年ほどしか経っていない初期の宇宙において、幅およそ10万光年とされる天の川銀河の300倍以上の大きさに広がるガスでできた「蜘蛛の巣」のようなフィラメント構造に存在していたといいます。フィラメントを「蜘蛛の巣の糸」と表現するMignoli氏は、ガスはフィラメントに沿って流れることが可能で、銀河はフィラメントどうしが交差する場所において成長していたと語ります。
また、6つの銀河に囲まれていた超大質量ブラックホールの質量は、この時代においてすでに太陽の10億倍に達していたとみられています。近年ではビッグバンから10億年以内という早い時代に存在していた太陽の数億倍以上の質量を持つ巨大なブラックホールが幾つか報告されていて、超大質量ブラックホールが急成長できた謎を解くための研究が進められています。
発表では、暗黒物質(ダークマター)が集まったハローが大量のガスを引き寄せたことで形成されたと考えられている「蜘蛛の巣」のようなフィラメント構造やそこで進化した銀河の中に、超大質量ブラックホールの急成長を支えられるだけのガスが含まれていた可能性に言及。ジョンズ・ホプキンス大学のColin Norman氏は、大規模構造における暗黒物質ハローの内部で巨大なブラックホールが成長したとする説を支持する結果が得られたと語ります。
なお、今回発見された銀河は最大級の光学望遠鏡でも数時間の観測が必要なほど暗く、現在の望遠鏡で観測できる最も暗い銀河の一部だといいます。INAFのBarbara Balmaverde氏は「私たちは氷山の一角を目にしたにすぎないと信じています」とコメントしています。
関連:観測史上2番目に遠く、超大質量ブラックホールを有するクエーサーを発見
Image Credit: ESO/L. Calçada
Source: ESO
文/松村武宏
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