一時は逆戻りもした火星探査機のセンサーがついに地中へ。前進再開は来年の予定

sorae.jp / 2020年10月20日 20時52分

2020年10月3日に「インサイト」が撮影した地表の様子。左下から伸びるケーブルの先、中央付近の地中にモールが潜り込んでいる(Credit: NASA/JPL-Caltech)

2018年11月に火星のエリシウム平原に着陸したNASAの火星探査機「InSight(インサイト)」には、火星の地下における熱の量や伝わり方を調べるための熱流量計「HP3(※)」が搭載されています。NASAのジェット推進研究所(JPL)は10月16日、前進に苦労していた「the mole(モール、もぐらの意)」と呼ばれるHP3の地中センサーの全体がいよいよ地下に潜り込んだことと、地下に向けた前進再開は2021年の見込みであることを明らかにしました。

※…Heat Flow and Physical Properties Packageの略

■まさかの逆戻りから1年、ついにセンサー全体が地中に

全長40cmの細長い円筒形をしているモールは内蔵されているハンマーの打撃力によって少しずつ地中に潜り込んでいく仕組みが採用されています。モールが潜り込んでいくためには穴の壁面とのあいだにある程度の摩擦が必要で、摩擦がなければ打撃を加える度にモールはその場で跳ね返ってしまい、穴を掘り進めることができません。

JPLによると、モールが穴を掘り進めるのに欠かせない摩擦は穴の隙間を緩い土が埋めていくことで得られることが想定されていたといいます。ところがインサイト着陸地点の地下にあった土は過去のミッションで見られたものとは性質が異なり、土どうしがくっつきやすくて隙間が思うように埋まらず、モールの周囲には隙間が空いた穴ができてしまいました。モールを打ち込む作業は2019年2月に始まったものの、同年10月までに到達できた深さは約35cmに留まります。

インサイトの運用チームはロボットアームに取り付けられているスコップを使ってモールを横から穴に押し付け摩擦を得る作戦を試みたものの、打撃の度に穴の底が少しずつ埋め立てられていくことで、まるで地中から押し出されるようにモールが地上に逆戻りしてしまう事態に遭遇しています。その後、2020年3月からはモールの後端をスコップで押さえながら慎重に打ち込んでいく作業が行われていました。

2019年10月に穴から逆戻りしてしまったモール(筒状の装置)。側面の様子から地中にどこまで埋まっていたかが見て取れる(Credit: NASA/JPL-Caltech)

後ろから押さえる試みが功を奏してついに全体が火星の地中へと潜り込んだモールですが、熱流量を測定するためには最低でも地下3mに到達しなければなりません。JPLによると、モールが穴を掘り進めるのに必要な摩擦をしっかりと得るために、ロボットアームのスコップを使ってモールの上から土を突き固める作業が行われるようです。

この作業は数か月かけて実施される予定で、前進再開は2021年の早い段階になる見込みです。JPLのTroy Hudson氏は「予期せぬ事態を乗り越えてこれまで以上の深さに到達できたことはとても嬉しいですが、これで終わりではありません」とコメントしています。

火星探査機インサイトを描いた想像図。手前の地面に置かれている装置のうち左が地震計「SEIS」、右が熱流量計「HP3」(Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

関連:火星探査機インサイトの地中センサー、押し戻されたりもしたけど地下に向け前進再開

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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