アルマ望遠鏡、土星の衛星タイタンの大気で「シクロプロペニリデン」を検出
sorae.jp / 2020年10月29日 10時56分
NASAゴダード宇宙飛行センターのConor Nixon氏らの研究グループは、チリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡」を使った観測の結果、土星の衛星タイタンの大気中に「シクロプロペニリデン(C3H2)」が検出されたとする研究成果を発表しました。
シクロプロペニリデンはベンゼンに代表される芳香族化合物の一種です。発表によると、これまでシクロプロペニリデンは星々の間に存在するガスや塵が集まった分子雲(星間分子雲)のような場所では検出されたことがあったものの、大気中で検出されたのはタイタンが初めてだといいます。Nixon氏はタイタンの大気でシクロプロペニリデンが見つかったのは予想外のことだったとコメントしており、発表ではシクロプロペニリデンがタイタンに存在し得る生命を支える複雑な化合物のもとになる可能性にも触れられています。
タイタンには窒素を主成分とした濃い大気(地表の気圧は約1.5気圧、大気の密度は地球の約4倍)があり、循環しているのが水ではなく炭化水素のメタンという違いはあるものの、雲や雨、川や湖も存在しています。そんなタイタンの環境は古代の地球の環境に似ているのではないかとも考えられており、タイタンの表面には地球において生命の誕生に関わったのと同じ分子が存在する可能性もあるとみられています。
タイタンの大気にシクロプロペニリデンが存在している理由や、他の天体の大気では検出されない理由についてはまだ未解明とされています。Nixon氏は「シクロプロペニリデンよりも大きな分子を探していますが、地表に降り注ぐ複雑な有機分子が形成される化学反応を理解するには、大気中で何が起きているのかを知らなければなりません」と語ります。
また、2027年にタイタンに向けて打ち上げられる予定の探査機「Dragonfly(ドラゴンフライ)」の副主任研究員を務めるゴダード宇宙飛行センターのMelissa Trainer氏は、タイタンについて「生命が定着しつつあった古代の地球と同様の化学反応が観察できる実験室だと考えています」とコメントしています。なお、ドラゴンフライはタイタンの空を飛んで移動するドローン型の探査機で、さまざまな場所からサンプルを集め、タイタンの環境を調べる予定です。
関連:土星の衛星タイタンの濃密な大気の下に広がる地表。特殊フィルターで撮影
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/松村武宏
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