地球型惑星の初期の歴史を知らせる火星のトロヤ群 月の「生き別れの兄弟」である可能性
sorae.jp / 2020年11月5日 20時54分
惑星と太陽、トロヤ群の集まるラグランジュ点L4,L5で正三角形を形成(Credit: Armagh Observatory)
月の成分に非常によく似た小惑星群が火星のトロヤ群から確認されました。トロヤ群とはラグランジュ点という力学的に安定している場所に密集する小惑星群のことで、図のように各惑星ごとにトロヤ群が2ヶ所に存在します。ちなみに地球のトロヤ群小惑星「2010 TK7」はNASA(米国航空宇宙局)の広域赤外線探査衛星「WISE」が発見し、その起源は火星と木星間の小惑星帯だとコンピューターシミュレーションで判明しています。
このようにトロヤ群の起源は天体物理学者の関心の的であり、地球のような岩石型惑星誕生後の初期の歴史を知る手がかりになるといいます。
火星のトロヤ群の観測は北アイルランドにあるアーマー天文台によって長年続けられてきました。そのひとつである「(101429)1998 VF31」の成分を超大型望遠鏡「VLT」の分光装置「X-shooter」で解析した結果、普通コンドライトという炭素と水を豊富に含む物質だと判明しました。
ところが(101429)1998 VF31の成分を隕石やほかの小惑星と比較しても、どのタイプにも当てはまりませんでした。ほかの天体とも比較した結果、なんと月に一番近いことが判明。月に微惑星が衝突した際に作られた「破片」が火星のトロヤ群の起源である可能性があるといいます。
ただし、これが唯一のシナリオではないようです。太陽系圏外からやって来た小惑星が太陽フレアなどの照射を長年受けることで月に近い成分になったというシナリオや、輝石を多く含むため火星からトロヤ群にたどり着いたシナリオが考えられるとのことです。
Image Credit: Armagh Observatory
Source: Phys.org
文/Misato Kadono
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