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活動的な中心から数万光年規模の影が伸びている銀河「IC 5063」

sorae.jp / 2020年11月23日 23時18分

ハッブル宇宙望遠鏡が観測した銀河「IC 5063」(Credit: NASA, ESA, and W.P. Maksym (CfA))

こちらは南天の「インディアン座」の方向およそ1億5600万光年先にある銀河「IC 5063」です。IC 5063は比較的小さな領域から強い電磁波を放つ活動銀河核を持った「セイファート2型」に分類されていて、幅3万6000光年ほどの範囲を捉えた画像の中心付近には明るく輝く銀河核が見えています。

その明るい領域の上下に注目してみると、銀河核を要として細長く伸びた扇形の影のような暗い筋が、V字を描くようにそれぞれ2本ずつ写っているように見えます。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのPeter Maksym氏らによると、この暗い筋は実際にIC 5063の活動銀河核から伸びた影の可能性があるようです。

冒頭の画像に影の範囲などを示した注釈を加えたもの(Credit: NASA, ESA, and W.P. Maksym (CfA))

研究グループはIC 5063の中心から伸びる影を生み出した原因について幾つかの仮説を立てましたが、そのうちの一つに超大質量ブラックホールを取り囲む塵の集まりであるトーラス(ドーナツ形の構造)との関わりを示すものがあります。活動銀河核の中心には活発に活動する超大質量ブラックホールが存在するとみられており、その周囲には塵が集まってできたトーラスが形成されていると考えられています。

超大質量ブラックホール周辺から放射された光の一部は周囲を取り囲むトーラスに遮られることになりますが、IC 5063の中心にあるブラックホールの回転軸とトーラスが銀河円盤に対して傾いているために、地球からは銀河の上下方向に長い影が伸びているように見えているのではないかと研究グループは予想しています。影が実際にトーラスの影響によるものであれば、超大質量ブラックホール周辺に分布する物質についての手がかりが得られるかもしれないといいます。

超大質量ブラックホールを取り囲む塵でできたトーラスを描いた想像図。画像の上下に影が伸びている(Credit: NASA, ESA, and Z. Levy (STScI))

雲の切れ間などから漏れて放射状に見える太陽光線は「薄明光線」と呼ばれていて、「天使の梯子」などと表現されることもありますが、発表ではIC 5063で観測された光と影の相互作用が薄明光線に似ているとして言及されています。冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」と「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」によって観測されたもので、ESA(欧州宇宙機関)からハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2020年11月23日付で公開されています。

アメリカのグランドティトン国立公園で撮影された薄明光線(Credit: Z. Levay)

 

関連:拡大して余すことなく見たい渦巻銀河。おおかみ座の「NGC 5643」

Image Credit: NASA, ESA, and W.P. Maksym (CfA)
Source: ESA/Hubble / hubblesite.org
文/松村武宏

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