太陽系から銀河中心までの距離は約2万5800光年。日本のVLBIなどによる観測成果
sorae.jp / 2020年11月28日 20時6分
VERAプロジェクトによる観測を含む224天体の位置と動きを天の川銀河の想像図に重ねたもの。色は同じ渦巻腕に属する天体ごとに着色されている(Credit: 国立天文台)
太陽系から天の川銀河の中心までの距離は、従来の想定よりも近い約2万5800光年だった。そんな新しい測定結果を含む研究成果が、国立天文台水沢VLBI観測所と鹿児島大学の研究者を中心としたグループから発表されています。
発表されたのは「VERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry)」と呼ばれる超長基線電波干渉計(VLBI:Very Long Baseline Interferometer)を用いたプロジェクトによる20年間に渡る観測成果をまとめた10本の論文です。VERAプロジェクトでは水沢VLBI観測所をはじめとした国内4か所にある電波望遠鏡を連携させることで直径2300kmの望遠鏡に匹敵する高い解像度が実現されており、天体までの距離や運動を高精度で計測する位置天文観測が行われてきました。
VERAプロジェクトの観測で得られた99天体を含む224天体の観測データをシミュレーションと比較した結果、天の川銀河の基本的な尺度となる銀河中心距離(太陽系から天の川銀河中心までの距離)は約2万5800光年、太陽系の位置における銀河回転速度は秒速227kmであることが測定できたといいます。
国立天文台は、今回測定された銀河中心距離は国際天文学連合(IAU)が1985年に勧告した約2万7700光年よりも2000光年ほど短く、天の川銀河中心に存在が確実視されている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」を周回する天体の軌道をもとに算出され2019年に発表された2万5800~2万6600光年という推定値とよく一致するとしており、「いて座A*」が銀河回転の力学的な中心に位置することが示唆されるといいます。
現在VERAプロジェクトでは「いて座A*」までの距離の直接測定に挑戦しており、国立天文台では今後も超大質量ブラックホール研究の進展に寄与することが期待されるとしています。また、位置天文観測を行う人工衛星との協力による重要な天体の高精度観測に加えて、VERAが中心的な役割を担う東アジアVLBIネットワークの拡張も見据え、VERAを構成する4局の電波望遠鏡を活用した研究を引き続き推進するとしています。
Image Credit: 国立天文台
Source: 国立天文台 / 水沢VLBI観測所
文/松村武宏
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