【宇宙天文を学ぼう】宇宙に漂う星の集合体「銀河」とは?
sorae.jp / 2021年1月8日 17時4分
街の灯りから離れた郊外の夜空を見上げると、帯のように光り輝く天の川を見ることができます。天の川の正体は、1000億個から4000億個とも言われる星々からなる「天の川銀河」を内側から見た姿です。
「銀河」とは、数億から数兆個の星々と星間ガスがひとかたまりに集まった天体です。天の川銀河の周りには大マゼラン雲や小マゼラン雲といった小さな銀河(伴銀河)があります。また、天の川銀河の近くにある大きな銀河としては「アンドロメダ銀河(M31)」が知られています。
■銀河の分類銀河はその形状によって、「楕円銀河」「渦巻銀河」「棒渦巻銀河」「不規則銀河」に分類されています。この分類はアメリカの天文学者エドウィン・ハッブルによって提唱されたもので、「ハッブル分類」と呼ばれています。
●渦巻銀河・棒渦巻銀河
「渦巻銀河」と「棒渦巻銀河」は円盤状の銀河で、星間ガスを多く含みます。銀河の中心部分にある膨らんだ部分は「バルジ」と呼ばれていて、バルジを取り巻く「円盤」にはバルジから渦巻状の構造「渦巻腕」が伸びています。渦巻腕には明るく青く光る若い星や、電離したガスの雲が含まれます。
渦巻銀河と棒渦巻銀河の違いは、バルジの形状が球状なのか棒状なのかで決まります。渦巻銀河はバルジが大きいものから順に「Sa」「Sb」「Sc」「Sd」「Sm」という型に分けられていて、同様に棒渦巻銀河も「SBa」「SBb」「SBc」「SBd」「SBm」と分類されます。
分類の添え字(小文字の部分)はもともとaからcが割り当てられていましたが、その後の研究でdやm(不規則形状的)も使われるようになりました。なお、渦巻銀河の分類を「SAa」「SAb」「SAc」…と表記する場合もあります。
関連
・拡大して余すことなく見たい渦巻銀河。おおかみ座の「NGC 5643」
・炎が吹き出ているようなアーチ構造をもつ渦巻銀河「M106」
・2重の棒状構造と大きな渦巻腕が見事な南天の棒渦巻銀河
・まるで記号や文字のよう。くじら座に輝く棒渦巻銀河
●楕円銀河
「楕円銀河」は渦巻銀河や棒渦巻銀河と比べて恒星が分布する密度にあまり濃淡がなく、形状の特徴もとぼしい銀河です。楕円銀河には比較的年老いた恒星が多く存在しており、これらの恒星は表面温度が低いために楕円銀河は赤色や黄色に見えます。星の材料となる星間ガスが楕円銀河では少ないことも、年老いた星が多いことを裏付けています。
楕円銀河はその見かけの形の潰れかた(長径と短径の比)で細分化されていて、球に近い形の「E0」から、最も細長く潰れた形の「E7」に分類されています。
関連
・巨大なフィラメント構造が幾筋も走るケンタウルス座の楕円銀河
・楕円銀河M89に見る「激動の時代」の痕跡
●不規則銀河
「不規則銀河」は、楕円銀河・渦巻銀河・棒渦巻銀河以外の銀河の総称で、バルジを取り巻く円盤や渦巻腕といった特徴もみられません。不規則銀河は銀河の規模が小さいために不規則なものと、銀河どうしの接近や衝突といった相互作用によって不規則な形に変形したものがあります。
関連
・ハッブルはアップデートする。崩壊と創造の不規則銀河
・不規則銀河に見られる青い証拠
・不規則銀河の花火の様な星形成領域
・天の川銀河に最も近いスターバースト銀河の全体像
銀河は宇宙の中でバラバラにまんべんなく分布しているのではなく、「銀河群」や「銀河団」と呼ばれる集団を形作っています。また、視野を宇宙のより広い範囲に広げてみると、銀河の集団である銀河団が網の目状に分布していることが観測によって分かっています。
●銀河群と銀河団
数個~数十個の銀河の集団を銀河群といい、100個程度以上の銀河の集団を銀河団といいます。
私たちが住んでいる天の川銀河は「局部銀河群」と呼ばれる銀河群に属しています。局部銀河群には天の川銀河の他に「アンドロメダ銀河(M31)」や「さんかく座銀河(M33)」など50個以上の銀河が含まれています。
地球に最も近い銀河団は約6000万光年離れた「おとめ座銀河団」です。おとめ座銀河団には超大質量ブラックホールの撮影に成功した楕円銀河「M87」をはじめ、大小3000個の銀河が存在しています。その他の銀河団としては「かみのけ座銀河団」や「ヘルクレス座銀河団」などが知られています。
関連
・画像1枚で1.6GB!ハッブル公開画像で2番目に巨大な「さんかく座銀河」(M33)
・宇宙最大級のブラックホール、かみのけ座で撮影される
・合体していく4つの銀河団「Abell 1758」
●宇宙の大規模構造
銀河団よりもさらに大規模な構造として、複数の銀河団が網の目のように分布している構造があります。このような銀河群・銀河団によるネットワークは「宇宙の大規模構造」と呼ばれています。宇宙の大規模構造は初期宇宙の密度の揺らぎから形成され得ることがコンピュータシミュレーションによって再現されています。
関連
・過去100億年で宇宙の平均温度は約10倍も上昇 ミクロな量子「ゆらぎ」が生んだマクロな現象
・銀河をつなぐ数百万光年規模の水素ガス構造を観測
銀河の一部には、中心部の非常に狭い領域から強い電磁波を放射しているものがあります。このような銀河を「活動銀河」といい、その中心領域は「活動銀河核」あるいは「活動銀河中心核」(AGN:Active Galactic Nucleus)と呼ばれています。
活動銀河核のなかでも放射される電磁波の強さが最大級のものは「クェーサー」(準恒星状天体:quasar)と呼ばれます。クェーサーは遠方の宇宙にあり、銀河形成の初期に発生したと考えられています。クエーサーほど強力ではないものの、近傍の宇宙にも活動銀河核を宿す「セイファート銀河」や「電波銀河」といった活動銀河が見られます。
こうした活動銀河の中心には質量が太陽の数百万~数億倍もある「超大質量ブラックホール」が存在し、その周りには落下していくガスなどの物質によって高速で回転する「降着円盤」が形成されていると考えられています。超高温の物質によって形成される降着円盤からは、電波からX線やガンマ線に至るさまざまな波長で強い電磁波が放射されているとみられています。超大質量ブラックホールの生成や銀河中心核の活動の理解は、現在の天文学において大きな課題となっています。
関連
・活動銀河核のX線を弱めたのはブラックホールに破壊された恒星か?
・予想に反した存在。弱い活動銀河のブラックホール周辺に超小型降着円盤を確認
・ブラックホールとも中性子星とも言い切れない質量ギャップの天体
その他の特集記事はこちら(https://sorae.info/extra/)
編集/sorae編集部
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