月が誕生するとは限らない? 巨大衝突の結果は惑星の自転に影響される可能性
sorae.jp / 2020年12月10日 21時7分
ダラム大学のSergio Ruiz-Bonilla氏らの研究グループは、初期の地球に衝突して月の形成に関わったとされる原始惑星について、その自転の方向や速度が月の誕生を左右した可能性を示した研究成果を発表しました。研究グループの分析によると、条件によっては衝突後に月が形成されないこともあり得るようです。
初期の地球が別の原始惑星と衝突したことで月が形成されたとする説は「巨大衝突説(ジャイアント・インパクト説)」と呼ばれています。衝突した原始惑星は火星ほどのサイズがあったと考えられていて、ギリシア神話における月の女神セレネの母にちなみ「テイア(Theia)」と名付けられています。
テイアは初期の地球と正面からぶつかったのではなく、かすめるように衝突したとみられています。Ruiz-Bonilla氏らは衝突時のテイアの自転が巨大衝突と月の形成にどのような影響をもたらしたのかを調べるために、テイアの自転方向と自転速度を変えた5通りのシミュレーションを行いました。
シミュレーションの結果、「衝突時のテイアが自転していなかった」と仮定したケース(下の画像の右上)では、実際の月の80パーセントほどの質量があり、小さな鉄の核(コア)を持つテイア由来の破片の集まりが地球を周回する可能性が示されたといいます。
また、「テイアが地球を受け流すように比較的遅く自転していた」と仮定した場合(下の画像の左下)も、自転していなかった場合と同様に地球を周回する破片の集まりが形成されたものの、接近する地球を受け流すように自転していても自転速度が速い場合(下の画像の右下)は破片の集まりが地球の重力から逃れて飛び去ってしまったといいます。
いっぽう、「テイアが接近する地球に逆らうように自転しながら衝突した」場合では、自転速度が速くても遅くても(下の画像の左上、自転速度は上段が速く下段が遅い)衝突後に地球とテイアが合体してしまい、破片の集まりは生じなかったといいます。
研究グループは、今回の結果が月の起源を説明する決定的な証拠ではないと言及しつつ、巨大衝突の余波を用いたシミュレーションモデルでは天体の自転も考慮する必要があると指摘。今後は初期の地球とテイア双方の質量、移動速度、自転速度を変えたさらなるシミュレーションを行い、月の形成に対してどのような影響があったのかを分析する予定だとしています。
関連:地球の生命は月の磁場にも守られながら誕生したのかもしれない
Image Credit: Ron Miller
Source: ダラム大学
文/松村武宏
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