2020年「宇宙天文ニュース」10大ニュース ~後半・天文編~
sorae.jp / 2020年12月25日 20時0分
2020年も残すところあと1週間ほどになりました。新型コロナウイルス感染症が全世界に広がった今年は宇宙開発や天文学の分野も大きな影響を受けましたが、厳しい状況下でもこれまでの努力が実った瞬間や今後の流れを左右する出来事がありました。そこでsoraeでは今年お伝えしたニュースのなかから注目すべきニュースを10本ピックアップ。今回は後半の「天文ニュース編」として5本をご紹介します!
■オリオン座の「ベテルギウス」で大幅な減光が観測されるオリオン座の1等星「ベテルギウス」は、今後10万年以内に超新星爆発が観測されると予想されている赤色超巨星です。ベテルギウスでは2019年10月から2020年2月にかけて約1.6等まで暗くなった大幅な減光が観測され、超新星爆発の予兆ではないかとして話題になりました。
ベテルギウスはもとも膨張と収縮(脈動)を繰り返すことで周期的に明るさが変わる脈動変光星としても知られています。減光を示したのも今回が初めてではなく、ベテルギウスを長年観測し続けてきた研究者の予想通り2020年2月下旬からは増光に転じています。
今回観測された減光の原因は解明されていませんが、ベテルギウスが放出した塵によって地球から見たベテルギウスの一部が隠されたことが原因だとする説や、ベテルギウスの表面に出現した巨大な黒点による温度低下が原因だとする説などが提唱されています。
また、これまでベテルギウスは地球からの距離が約700光年で直径が太陽の1000倍以上と考えられていましたが、実際の距離は約530光年先で直径は太陽の約750倍だとする研究成果が今年発表されています。この研究ではベテルギウス内部の核融合反応についても分析されており、「爆発にはまだ遠い」と結論付けられています。満月に匹敵する明るさに達するとされるベテルギウスの超新星爆発を、人類が観測する日は来るのでしょうか?
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2020年7月2日未明、関東地方の上空を西から東へと火球(明るい流星)が通過し、流星観測ネットワークなどによって撮影され話題になりました。この火球は隕石の落下をともなうもので、習志野市と船橋市で隕石の一部が発見・回収されています。
国立科学博物館のガンマ線測定によって回収された破片は最近落下した隕石であることが確認されていましたが、国立極地研究所や九州大学などによる詳しい分析の結果、2か所で見つかった破片は同じ隕石に由来することや、太陽系が形成された約46億年前の直後に隕石が形成されたこと、隕石の種類は「H5コンドライト」であることなどが判明。国際隕石学会への登録申請を経て、10月24日付で「習志野隕石」として正式に登録されました。
なお、習志野隕石1号(習志野市で発見)は70gと63gの大きな破片を中心に合計156gが、習志野隕石2号(船橋市で発見)は95gと73gの大きな破片を中心に合計194gが回収され、分裂した隕石が広範囲に落下する隕石雨だったことが確認されています。国立科学博物館によると国内に落下した隕石としては53番目で、2018年9月の「小牧隕石」以来およそ2年ぶりとされています。
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2020年は彗星にも注目が集まりました。2019年12月にハワイの小惑星地球衝突最終警報システム「ATLAS」によって発見された「アトラス彗星(C/2019 Y4)」は、当初太陽に再接近する2020年5月31日には0等前後まで明るくなると予想されており、最接近直前の5月上旬~中旬にかけて1~3等で輝く様子を肉眼で見られるかもしれないと期待されていました。
しかし、2020年4月上旬になるとアトラス彗星の核が崩壊したことが確認され、その後「ハッブル」宇宙望遠鏡によって30個ほどに断片化した様子が撮影されました。彗星の予測は難しく、過去には大彗星になることが期待されながらも太陽への接近時に崩壊した「アイソン彗星(C/2012 S1)」の例もあります。
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・肉眼で見える可能性のアトラス彗星、核の崩壊が確認される
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いっぽう、2020年3月にアメリカ航空宇宙局(NASA)の赤外線天文衛星「NEOWISE」によって発見された「ネオワイズ彗星(C/2020 F3)」は、太陽最接近後に1等ほどまで明るくなり、日本でも7月上旬~中旬にかけて肉眼や双眼鏡・望遠鏡で観測することができました。次に太陽へ接近するのは5000年以上先とみられており、その輝きは世界中で観測・撮影されています。
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2020年9月、金星の大気中に「ホスフィン」(リン化水素、PH3)という物質が約20ppbの割合で検出されたとする研究成果が発表され、研究者の間で議論を巻き起こしました。
木星や土星などの巨大なガス惑星では、高温・高圧な内部で生成されたとみられるホスフィンが検出されています。しかしガス惑星とは環境が異なる地球の自然界におけるホスフィンは、嫌気性の微生物によって生成される生命活動に由来する物質です。地球や金星のような岩石質の惑星において、生物が関与せずにホスフィンが生成される過程は知られていません。
金星の地表は温度が摂氏約480度、気圧が約90気圧と地球よりも過酷な環境ですが、高度50~60km付近の大気中は気温などの条件から生命が存続できるのではないかと考えられており、酸性度の高い環境に順応した仮想の微生物を想定したライフサイクル(生活環)も研究されています。金星の大気で検出されたホスフィンは未知の非生物的な反応で生成された可能性もあるものの、生命の存在を示しているかもしれないとして注目されているのです。
ただ、発表されたホスフィンの検出には反論も相次いでおり、研究に用いられたチリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡」による観測データの一部に問題が見つかったことから、データの再処理と再公開も行われています。ホスフィンはたしかに検出されたのか、検出されたのであればそれは何に由来するのか。今後も研究の進展に注目です。
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2020年12月、木星と土星が地球からの見かけ上接近する「会合」の時期を迎えました。最接近は12月22日未明で、木星と土星は満月の見かけの直径の約5分の1(約6秒角)まで接近。最接近の瞬間は日本から観測することはできなかったものの、その前後となる12月21日や22日の日没後には、くっつきそうなほど接近した木星と土星を肉眼でも見ることができました。
木星と土星の会合そのものは約20年ごとに起きていますが、惑星は形や傾きがそれぞれ異なる軌道を各々の周期で公転しているため、会合の時にどこまで接近して見えるのかは毎回異なります。前回ここまで近づいたのは1623年7月17日だといいますから、今回の会合は397年ぶりの大接近ということになります。
一生のうちに数回しか見られないというだけでも貴重ですが、大接近ともなればさらに貴重。1623年の会合は赤道付近以外では観測が難しかったとみられており、木星と土星を望遠鏡で同時に観測するのは今回が人類史上初めてかもしれないのです。ちなみに、次に同じくらい木星と土星が接近する会合は60年後の2080年3月とのことなので、若い世代のなかには大接近を2回見られる人がいるかもしれませんね。
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文/松村武宏
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