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星々の動きがもたらす天の川銀河の“歪み”は約4億4000万年で一周している?

sorae.jp / 2021年1月24日 11時10分

片側が上に、片側が下に歪んだ天の川銀河を描いた想像図。右下に見えているのは伴銀河の大マゼラン雲と小マゼラン雲(Credit: Stefan Payne-Wardenaar; Magellanic Clouds: Robert Gendler/ESO)

片側が上に、片側が下に歪んだ天の川銀河を描いた想像図。右下に見えているのは伴銀河の大マゼラン雲と小マゼラン雲(Credit: Stefan Payne-Wardenaar; Magellanic Clouds: Robert Gendler/ESO)

私たちが住む天の川銀河は、少し反り返ったような歪んだ形をしていることがこれまでの観測と研究によって判明しています。バージニア大学のXinlun Cheng氏らの研究グループは、この歪みが約4億4000万年ごとに天の川銀河を1周していることが明らかになったとする研究成果を発表しました。

渦巻銀河は多くの星が集まる中央部分の膨らんだ「バルジ」、バルジを取り囲む渦巻腕がある平らな「円盤(銀河円盤)」、バルジと円盤を球状に取り囲む希薄な「ハロー」という構造を持っていて、天の川銀河を含む渦巻銀河の3分の2はバルジから棒状の構造が伸びる棒渦巻銀河に分類されています。

発表によると、こうした渦巻銀河のうち50~70パーセントは円盤部分がポテトチップスのように歪んだ形をしているといいます。近年の観測により天の川銀河も円盤部分が歪んでいる銀河のひとつであることが判明していますが、そのなかで暮らしている人類は天の川銀河を外側から観測することができないため、天の川銀河の歪みについてはまだ十分には理解されていないといいます。

大きく歪んでいる銀河の一例「UGC 3697」(Credit: DECaLS)

研究グループは天の川銀河の歪みを詳しく調べるために、アメリカのアパッチポイント天文台で実施されているサーベイ観測プロジェクト「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」の一部である「アパッチポイント天文台銀河進化観測実験(APOGEE)」と、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」の観測データに注目。APOGEEで収集された天体の分光観測(電磁波の特徴を波長ごとに分けて捉える観測手法)データと、天体の位置や運動について調べるアストロメトリ(位置天文学)に特化したガイアのデータを組み合わせた研究グループは、星々の位置、移動速度、科学的な性質の情報を含む天の川銀河の3次元マップを作成し、歪みを分析しました。

研究グループによると、歪みが生じたきっかけは天の川銀河とその周囲にある伴銀河との相互作用がもたらした重力の波紋であり、その波紋は上下に移動しながら周回する星々の動きによってもたらされる「波」として天の川銀河を移動し続けているといいます。今回の研究では、歪みの原因となっているこの波の速度や範囲をこれまで以上に正確に測定することができたとされています。

天の川銀河を伝わる波について、スタジアムなどで観衆が立ち上がったり座ったりして作り出すウェーブにたとえて「星々は上下に動くだけですが、波は銀河を伝わっていきます」と説明するCheng氏は、分析の結果、伴銀河との相互作用が起きた時期について約30億年前の可能性が高いとコメントしています。

▲歪みが天の川銀河を周回している様子を示したアニメーション(Credit: Xinlun Cheng)▲

 

Image Credit: Stefan Payne-Wardenaar; Magellanic Clouds: Robert Gendler/ESO
Source: SDSS
文/松村武宏

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