月の満ち欠けが人の睡眠に影響を及ぼしているかもしれない
sorae.jp / 2021年1月31日 17時47分
人類にとって身近な天体である月は、古くから物語の舞台となったり暦を定めるために用いられたりしてきましたが、人の気分や行動にまで何らかの影響を及ぼしているのではないかとも考えられてきました。今回、ワシントン大学のHoracio de la Iglesia氏が率いる研究グループは、月の満ち欠けが人間の睡眠に影響を及ぼしている可能性があるとする研究成果を発表しています。
■睡眠ログから月の満ち欠けと同じ29.5日の周期を発見人間には睡眠や覚醒のタイミングなどを司る「概日リズム(circadian rhythm)」と呼ばれる約1日周期のリズムが存在することが知られています。概日リズムは特に光の影響を強く受けると考えられていて、研究グループによると、電気を用いた照明の利用が人の睡眠に影響を与えている可能性がこれまでの研究において示されてきたといいます。
今回研究グループはアルゼンチンの先住民族98人を対象に、手首装着型のデバイス(フィリップスのActiwatch Spectrum Plus)で収集された1~2か月間に渡る睡眠ログを調査しました。調査の対象者は「照明を利用していない農村の住民」「限定的に照明を利用する農村の住民」「照明の利用に制限がない都市の住民」の3グループに分かれており、照明から受ける影響がそれぞれ異なっています。
睡眠ログを分析した結果、都市の住民は農村の住民よりも就寝時間が遅くて睡眠時間も短く、過去の研究で指摘されていた照明に由来するとみられる影響が今回の調査でも示されたといいます。ところが、研究グループは照明の影響が異なるはずの都市の住民と農村の住民双方の睡眠ログにおいて、月の満ち欠けと同じ29.5日周期で就寝時間と睡眠時間が変動していることに気がついたといいます。
研究グループによると、この周期のもとで睡眠時間の長さは46~58分変化し、就寝時間は前後に約30分変動。3つのグループにおける変化を平均すると、満月に至るまでの3~5日間で就寝時間が最も遅く、睡眠時間が最も短いことが明らかになったといいます。そこで研究グループが別の調査のために記録されていたシアトルの大学生464人を対象にした睡眠ログを分析したところ、やはり同様の周期が確認されています。
■照明発明前の睡眠のリズムが今も残っている?▲今回の研究内容を紹介する動画(英語)(Credit: ワシントン大学)▲
研究グループではこの周期について、人類の祖先が月明かりを利用していた頃のなごりではないかとの仮説を立てています。
照明が発明される前、人が夜間に利用できた最大の光源は月でした。特に満月直前の数日間は明るい月が午後遅くから夕方に姿を現し、周囲を明るく照らします。研究グループによると、かつての人類は満月前のこの時期になると月明かりに夜行性の活動が刺激されていて、そのことが今も月の満ち欠けに同期した就寝時間や睡眠時間の変化として現れているのではないかというのです。
なお、満月後の数日間も同じくらい明るい月が昇りますが、月の出は毎日約50分ずつ遅くなっていくため、研究グループは満月前よりも遅く昇るようになる満月後の月は夜間の照明としては利用しづらかったのではないかと推測。結果として就寝時間が最も遅く睡眠時間が最も短くなる時期が満月の前に集中しているとみられています。
また、これまでの研究で可能性が示されてきた人工照明による就寝時間や睡眠時間への影響も、照明が満月前の月明かりと同様の刺激となって睡眠を乱していることが考えられるとde la Iglesia氏は指摘しています。さらに研究グループは、前述の先住民族グループのうち主に農村の2グループの睡眠ログから月の満ち欠けの半分となる15日の周期で変化する2つ目のリズムらしきものも見つかったとしており、光とは別の要因(重力など)が影響している可能性も考えられるといいます。
ただ、発表でも触れられているように、月が実際に人間の睡眠に影響を及ぼしているかどうかは研究者のあいだでも議論が続いています。「人工の明かりが満ちあふれる都会では、外出したり窓の外を見たりしない限り月の満ち欠けには気が付かないでしょう」と語る論文の筆頭著者であるワシントン大学のLeandro Casiraghi氏は、今後の課題として「この効果が光に影響されやすい概日リズムを通して作用しているのか、それとも睡眠のタイミングに影響を与える別のシグナルを介しているのか、学ぶべきことは山ほどあります」とコメントしています。
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center
Source: ワシントン大学
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
「朝型」「夜型」タイプに合わせて体調を管理 セイコーが体内時計の診断ツール公開
産経ニュース / 2024年11月29日 15時46分
-
11月20日の月が教えてくれるヒント 親しい友人と食事する
CREA WEB / 2024年11月20日 0時0分
-
1秒間に716日が過ぎる! 自転が最速の中性子星の1つ「4U 1820-30」を発見
sorae.jp / 2024年11月17日 21時0分
-
【11月のムーンアクション】11月16日は牡牛座の満月、寒い季節を上手に乗り切るためのメソッド
占いTVニュース / 2024年11月8日 19時30分
-
予防医療視点から生活のコツをお届けする「SAKURA LIFE TIPS」 配信開始!
PR TIMES / 2024年11月6日 11時0分
ランキング
-
1AirPodsの音がぶちぶち途切れてしまう……原因は? 試すべき対処法はある?
オールアバウト / 2024年11月29日 21時25分
-
2一人暮らしの同僚は毎食「コンビニ弁当」です。「光熱費もかからないから、作るより安上がり」と言っていますが、そんなことないですよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月29日 5時50分
-
3Z世代が知ってる50代以上の女優 3位篠原涼子さん 2位天海祐希さんを抑えた1位は演技力半端ないあの人
まいどなニュース / 2024年11月29日 15時40分
-
4「今、ここで死にたい」患者の言葉に医師はどう対応すべきか
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月30日 8時15分
-
5ワークマンの「着る断熱材」がスゴイ! 寒さも暑さも感じない「無感覚アウター(レディース)」を着てみた
Fav-Log by ITmedia / 2024年11月23日 9時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください