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宇宙の始まりの出来事「ビッグバン」とは?

sorae.jp / 2021年3月21日 21時36分

現在の宇宙論では、宇宙は138億年前に超高温・超高圧の火の玉が爆発することで始まったと考えられています。

この大爆発のことを「ビッグバン(big bang)」と呼んでいます。
宇宙は超高温・超高圧の状態から始まり、現在も膨張を続けているのです。

■静的な宇宙 宇宙進化のタイムライン (Credit: NASA)

宇宙進化のタイムライン (Credit: NASA)

20世紀初めまでは宇宙には始まりも終わりもなく永遠不変のものだと考えられていました。
万有引力を発見したニュートンは、『宇宙が有限の大きさで有限個の星があるなら、星同士の重力でいつか収縮してしまうだろう』と指摘しています。しかし、宇宙空間が無限で無限個の星が一様に分布しているなら、静的な宇宙が存在できると考えていました。

一般相対性理論を作り上げて宇宙論の礎を築いたアインシュタインも、宇宙は静的であり、膨張や収縮などしないと考えていました。アインシュタインの理論でも重力は引力であるため、宇宙は時間と共に収縮するという結果になります。
そこで、アインシュタイン重力に釣り合う反発力があると仮定して静的な宇宙のモデルを作りました。
この反発力は一般相対性理論の方程式に宇宙項として導入されました。

■動的な宇宙

これに対して、ロシアの物理学者フリードマンは宇宙項のない一般相対性理論の方程式を解いて膨張宇宙モデルを導き出しました。
このモデルでは宇宙の中にある物質やエネルギーによる重力は働いていますが、宇宙自体の膨張でその効果が打ち消されます。

一方、ベルギーの神父ルメートルは宇宙項を導入した一般相対性理論の方程式を解いて、こちらも膨張宇宙モデルを得ました。
ルメートルのモデルでは宇宙項は膨張を加速する働きがあります。
これらの宇宙モデルが現在の標準的な宇宙モデルの元となっています。

 

関連:宇宙の膨張速度は時代だけでなく方向によっても異なる可能性

■膨張宇宙の証拠 膨張する宇宙 (Credit: 創造情報研究所)

膨張する宇宙 (Credit: 創造情報研究所)

1929年にアメリカの天文学者ハッブルが、遠くにある銀河ほど高速で遠ざかっていることを発見しました。
銀河の後退速度は銀河までの距離に比例しているのです。この関係をハッブル-ルメートルの法則と呼びます。

法則の名前にルメートルの名前が入っているのはなぜでしょうか?

実はルメートルも1927年に発表した論文で銀河の距離と後退速度の関係の予測をしていました。国際天文学連合は2018年に開かれた総会で「宇宙の膨張を表す法則は今後『ハッブル-ルメートルの法則』と呼ぶことを推奨する」という決議を成立させています。

 

関連:約134億光年先の天体「GN-z11」が観測史上最遠の銀河だと確定

■火の玉宇宙論

ハッブル-ルメートルの法則を素直に解釈すると、過去にさかのぼると宇宙は今よりも小さかったということになります。
現在は互いに遠ざかっている銀河も、時間を巻き戻すとあらゆる銀河が1点に集まっていたようなのです。

これは一体どういう状態でしょうか。

物質を押し縮めると密度が高くなり、温度が上がります。
ハッブル-ルメートルの法則からは宇宙の初めは原子や原子核も融けてしまうほどの高温だったことが導かれます。

宇宙初期の原子核合成の理論を考えたのが、科学啓蒙作家としても有名なガモフです。
ガモフは「宇宙は非常に小さな高温高密度の火の玉状態から始まって、膨張とともに希薄になり温度が下がって現在の状態になった」という火の玉宇宙モデルを主張しました。

■ビッグバン命名

宇宙物理学者フレッド・ホイルはユーモアを込めて「宇宙がドッカーンと大爆発した説」と言うニュアンスで、
宇宙の膨張説を「ビッグバン理論」と呼びました。
ホイルのネーミングセンスが良かったためか、世界中の研究者が「ビッグバン」と言う言葉を使うようになりました。

しかし、ホイルはビッグバン宇宙論を推し進める立場の人間ではなく、それに反対する定常宇宙論を唱えていました。
定常宇宙論では、宇宙は膨張していても時間的には変化しないと考えるのです。
膨張宇宙では物質の密度がだんだん小さく成るはずですが、定常宇宙論では無から物質が生成するため密度は一定になります。

■ビッグバンの証拠

1965年、ビッグバン宇宙論の決定的証拠が見つかります。それが宇宙背景輻射です。

宇宙背景輻射とは一体どういったものでしょうか?
宇宙背景輻射は宇宙のあらゆる方向から地球に降り注ぐ電波で、波長4ギガヘルツのマイクロ波です。
約138億年前(宇宙誕生後約38万年後)、3000K以上の高温だった宇宙から放射された光が約138億年かけて地球に届いたものです。
その間に宇宙は1000倍程に大きくなり、温度も3K(-270℃)まで冷えています。

この宇宙背景輻射の存在は、かつて宇宙には熱い時代があったということを示しています。

ビッグバン宇宙論により、宇宙は膨張しているだけではなく、始まりがあることが明らかになりました。
宇宙は永遠不変のものではなく、発展・進化していくものだったのです。

 

関連
・初代星はハッブルでも発見できず。その存在はビッグバンから5億年以内に誕生か
・ビッグバンから9億年後の宇宙で超大質量ブラックホールを取り囲む6つの銀河
・ビッグバンから10億年足らず。初期宇宙の不吉な星形成銀河
・初期の宇宙で成熟した銀河を多数観測、アルマ望遠鏡などによる成果
・124億年前に整った円盤銀河が存在していた。アルマ望遠鏡の観測で判明

 

Image Credit: NASA, 創造情報研究所, Shutterstock
文/sorae編集部

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