「ジュノー」が明らかにした木星の壮大なオーロラの起源
sorae.jp / 2021年3月27日 22時13分
NASAの木星探査機「ジュノー」に搭載された紫外線分光器の観測結果から、木星のオーロラに特有の早朝の光である「オーロラ・ドーン・ストーム(auroral dawn storms)」の発生の様子が初めて明らかになりました。この巨大で一時的な光の現象は、木星の両極で発生しますが、これまでは地上および地球を周回する観測装置、とくにハッブル宇宙望遠鏡によってのみ観測されていました。この研究成果は、3月16日に「AGU Advances」に掲載されました。
ドーン・ストームは、1994年にハッブル宇宙望遠鏡の微光天体カメラによって初めて発見された現象で、早朝に大気が暗闇から抜け出す付近で、木星の「メイン・オーロラ・オーバル(main auroral oval)」(両極を取り囲む楕円形の光のカーテン)が短時間に激しく明るくなったり、広がったりするものです。ジュノーが木星の紫外線オーロラを観測するまでは、木星の夜側で起きていることは見えず、側面からの観測しかできませんでした。
「地球から木星のオーロラを観測しても、木星の外縁を越えて、木星の極の夜側を見ることはできません。ボイジャー、ガリレオ、カッシーニといった他の探査機は、比較的遠くから観測しており、木星の極の上空を飛行していなかったため、全体像を見ることができませんでした」と、論文の筆頭著者であるベルギー・リエージュ大学の研究者、Bertrand Bonfond氏は述べています。「ジュノーのデータは、ドーン・ストームが発生する夜側で何が起こっているのかをより深く理解することができるという点で、大きな変革をもたらすものです」
こちらの動画はジュノーの紫外線分光器によるデータを元にして、木星の極域オーロラにおけるドーン・ストームの発達を描いています。
研究者たちは、木星の夜側でドーン・ストームが生まれることを発見しました。惑星が自転すると、もうすぐ夜明けを迎えるオーロラも一緒に自転して昼側に移動し、複雑で強烈な明るさのオーロラはさらに輝きを増し、数百から数千ギガワットの紫外線を宇宙に放出します。この明るさの変化は、ドーン・ストームが通常のオーロラに比べて少なくとも10倍以上のエネルギーを木星の上層大気に放出していることを意味しています。
共同執筆者であるリエージュ大学のZhonghua Yao氏は、「ドーン・ストームの全体像を見たとき、それがサブストーム(substorms)と呼ばれる地球上のオーロラの一種に非常によく似ていることに気づかざるを得ませんでした」と述べています。
サブストームは、地球の磁気圏(地球の磁場によって制御されている宇宙空間の領域)で短時間の擾乱が発生し、そのエネルギーが地球の電離層の高い位置に放出されることで生じます。木星と地球の磁気圏は根本的に異なるため、木星と地球のサブストームの類似性は驚くべきことです。地球では、磁気圏は本質的に太陽風(太陽から放出された荷電粒子の流れ)と地球の磁場との相互作用によって制御されます。木星の磁気圏は主に衛星であるイオに起因しています。イオには活火山があり、そこから宇宙空間に放出されたガスがイオン化し木星の磁場に捉えられたことによるものです。
今回の発見により、オーロラの形成過程の違いや共通点をさらに研究することが可能となり、太陽系内外の世界で最も美しい惑星現象がどのようにして起こるのかをより深く理解することができます。
「木星が持つパワーは驚くべきもので、オーロラ・ドーン・ストームのエネルギーは、この巨大な惑星がいかに強力であるかを示す一つの実例です」と、サンアントニオのサウスウエスト研究所でジュノー・ミッションの主任研究員を務めているScott Bolton氏は述べています。「ドーン・ストームの発見は、巨大惑星の仕組みを常に書き換えているジュノー・ミッションの驚くべき成果です。NASAがミッションを延長したことで、わたしたちはさらに多くの新しい洞察や発見を期待しています」
わたしたちもジュノーの活躍から目が離せそうにありません。
Image Credit: NASA / JPL-Caltech / SwRI / UVS / STScI / MODIS / WIC / IMAGE /Uliège
Video Credit: NASA / JPL-Caltech / SwRI / UVS /Uliège
Source: NASA
文/吉田哲郎
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