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増え続ける地球周辺の人工物が夜空を1割以上明るくする可能性

sorae.jp / 2021年4月6日 20時25分

地球を囲うスターリンクの3Dイメージ(Credit: Shutterstock)

【▲ 地球を囲うスターリンクの3Dイメージ(Credit: Shutterstock)】

スペースXの衛星ブロードバンドサービス「スターリンク」のように、近年では数千~数万基の人工衛星から構築される衛星コンステレーションの整備が進められています。文明活動の利便性向上に寄与するいっぽう、大量の人工衛星が太陽光を反射することで地上からの観測に深刻な影響を与える「光害」(ひかりがい)を懸念する声もあげられています。

関連:衛星コンステレーションの「光害」高度や季節によっては一晩中影響も

スロバキア科学アカデミーのMiroslav Kocifaj氏らの研究グループは、地球を周回する人工物が増え続けることで、地球上の大部分における夜空の明るさが自然光だけの場合と比べて10パーセント以上明るくなる可能性を示した研究成果を発表しました。数マイクロメートルから数十メートルまで様々なサイズの人工物がもたらす光害によって、近いうちに地上から自然そのままの夜空を見ることが難しくなってしまうかもしれません。

星々の日周運動とスターリンク衛星の軌跡(Credit: Andreas Möller)

【▲ 星々の日周運動とスターリンク衛星の軌跡(Credit: Andreas Möller)】

■人工物に反射・散乱された太陽光で夜空が明るくなると推定

今回の研究で分析されたのはスターリンクに代表される衛星コンステレーションだけでなく、その他の人工衛星や宇宙ゴミ(スペースデブリ)も含む、地球を周回する人工物全体が太陽光を反射・散乱することによる総合的な影響です。研究グループによると、2021年1月1日の時点で稼働中の人工衛星は3372基、宇宙ゴミの数は数万に達します。衛星コンステレーションの整備が進むにつれて、今後10年間で人工衛星の数は1桁以上増加すると見込まれています。

スターリンクの整備を進めるスペースXでは天文学者と協力して人工衛星の反射光を軽減する取り組みも行っています。しかし研究グループは、夜空の明るさは個々の衛星の反射特性だけでなく打ち上げられた衛星の数にも比例することから、急激に増加する人工物が夜空を変えることになると指摘しています。Kocifaj氏は「夜空の明るさは増すとしてもわずかだろうと予想していましたが、理論にもとづいた推定は驚くべきものでした」と語ります。

打ち上げ準備中のスターリンク衛星(Credit: SpaceX)

打ち上げ準備中のスターリンク衛星(Credit: SpaceX)

都市部を離れれば大量の人工照明がもたらす光害から逃れられますし、最近では光害を考慮した照明器具も登場しています。しかし、地球を取り巻く人工物がもたらす光害は、たとえ文明活動から遠く離れた地域であっても無縁ではありません。光害問題に取り組む国際ダークスカイ協会の公共政策ディレクターであり、今回の研究に参加したJohn Barentine氏は「天文学者は暗い空を求めて市街地から遠く離れた地に天文台を建設してきましたが、人工衛星による光害は広範囲に及びます」とコメントしています

また、Barentine氏は「多くの人々から手つかずの夜空が失われることになるかもしれません」とも語っています。研究グループは、今回の研究成果が地球周辺の軌道を管理する最善の方法を求めて企業と天文学者の間で交わされている対話に変化をもたらすことを期待しています。

 

関連:「夜をオン」にすると見えてくるもの 「光害」をあらためて考えてみよう

Image Credit: Andreas Möller
Source: 王立天文学会
文/松村武宏

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