NASAの火星ヘリコプター「Ingenuity」初飛行に向けて寒い夜を乗り越える
sorae.jp / 2021年4月7日 20時26分
アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は現地時間4月5日、史上初めて地球以外の天体での飛行に挑む火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」が、単独で過ごす最初の夜を無事乗り越えたことを発表しました。JPLによると、Ingenuityの初飛行は現地時間4月11日にも実施される予定です。
■マイナス90度に下がることもある火星の夜を単独で過ごすことに成功Ingenuityは日本時間2021年2月19日朝に着陸した火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」の下部に搭載される形で火星へと運ばれました。高さ49cm、重量1.8kgと小型・軽量の機体には、幅1.2mのカーボンファイバー製ローター(二重反転式)や太陽電池が備えられています。将来の火星探査に備え、火星における動力飛行を実証することがIngenuityの目的となっています。
機体を横に90度傾けた状態でPerseveranceに搭載されていたIngenuityは、数日かけて4本の着陸脚を展開させつつ地面に水平になるよう姿勢を変更した後、現地時間4月3日に火星の地表へと降ろされて単独での稼働を開始。Ingenuityが自らの太陽電池を使って充電を始められるように、分離後のPerseveranceは速やかにその場から後退しています。
JPLによると、Perseveranceの着陸地点周辺では時として夜間の気温が摂氏マイナス90度まで下がることもあるといいます。火星探査機や探査車には寒さを乗り越えるための断熱材やヒーターが搭載されていますが、火星の薄い大気を飛行できる軽さとPerseveranceに搭載できるコンパクトさが求められたIngenuityの「寒さ対策」は一つの課題であり、最初の夜を無事に乗り越えられるかどうかが注目されていました。
Ingenuityのプロジェクトマネージャーを務めるJPLのMiMi Aung氏は「適切な断熱材とヒーター、それに十分な電力がバッテリーに蓄えられたことが確認できました。これはチームにとって大きな勝利であり、初飛行の準備を続けられることを大変喜ばしく思います」とコメントしています。
Ingenuityによる初飛行は高度3mを最大30秒間ホバリングする計画で、現地時間4月11日夜の実施が予定されています。運用チームによる確認作業の様子は日本時間4月12日16時30分からNASA TVやNASAの公式YouTubeチャンネルなどでライブ配信される予定です。また、飛行するIngenuityはPerseveranceによって撮影される他に、Ingenuityに搭載されているカメラからの撮影も試みられます。歴史的な挑戦まであと数日、成功を願いつつその瞬間を待ちたいと思います。
関連:火星の空を4月8日以降に初飛行 火星ヘリコプター「Ingenuity」
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU
Source: NASA/JPL (1) / NASA/JPL (2)
文/松村武宏
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