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重力レンズ効果が生む「アインシュタインの十字架」が一度に12個みつかる

sorae.jp / 2021年4月14日 23時0分

【▲ 今回新しくみつかった重力レンズ効果によって4つに分裂してみえるクエーサーの画像。「アインシュタインの十字架」と呼ばれる。(Image Credit:The GraL Collaboration)】

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は4月7日、ESAの位置天文衛星ガイアのデータを使って、ガイア重力レンズワーキンググループが、重力レンズ効果によって4つに分裂してみえるクエーサー、いわゆる「アインシュタインの十字架(Einstein Cross)」を一度に12個も発見したと発表しました。

ほとんどの銀河の中心には超大質量のブラックホールがひそんでいますが、この超大質量ブラックホールが、周りのガスや塵を渦を巻いて吸い込むと、ガスや塵同士の摩擦によって、莫大な熱が発生し、ガスや塵がプラズマ化して、X線から可視光線、電波にいたるまで、さまざまな光(電磁波)で強烈に光り輝きます。これがクエーサー(活動銀河核)です。

クエーサーは宇宙でもっとも明るい天体の1つといわれています。

ところで、このようなクエーサーと私達の地球の間に銀河や銀河団などの重い天体があると、1つのクエーサーがいくつにも分裂してみえることがあります。アインシュタインの一般相対性理論によれば、重い天体の周りでは、時空が曲がるために、あたかも凸レンズがあるかのような効果が生じて、背後にあるクエーサーからの光(電磁波)が複数の経路に別れて、地球に届くためです。これを重力レンズ効果といいます。

【▲ 重力レンズ効果によってアインシュタインの十字架が生じる仕組みを解りやすく解説したイラスト。(Image Credit:R. Hurt (IPAC/Caltech)/The GraL Collaboration)】

そのうち、1つのクエーサーが4つに分裂してみえるものが、アインシュタインの十字架です。アインシュタインの十字架は、非常に珍しく、1985年に初めて発見されて以来、これまでに50個ほどしかみつかっていません。

研究チームは、まず、ESAの優れた空間解像力を誇る位置天文衛星ガイアの2回目に公開されたデータを特化したAIを使って解析し、アインシュタインの十字架の候補を絞り込みました。そして、その後、NASAの広視野赤外線探査衛星(WISE)のデータを使ってさらに有力な候補を絞り込み、最終的に、アメリカ、ハワイ州にあるケックI望遠鏡などの地上の望遠鏡を使ってフォローアップ観測をおこない、新たに12個ものアインシュタインの十字架を発見しました。

研究チームでは、アインシュタインの十字架のように分裂してみえるクエーサーは、宇宙の誇張率に関するハッブル定数の決定やダークマターの研究などにユニークな研究手段を提供できますが、位置天文衛星ガイアのデータが最終的に公開されれば、このように分裂してみえるクエーサーが数百単位でみつかるのではないかと期待しています。

 

Image Credit:R. Hurt (IPAC/Caltech)/The GraL Collaboration/The GraL Collaboration
Source:ESA/論文
文/飯銅重幸

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