隕石内部に取り込まれていた太陽系初期の炭酸水、理論を裏付ける発見
sorae.jp / 2021年4月28日 11時45分
立命館大学の土`山明氏らの研究グループは、9年前にアメリカへ落下した隕石を調べたところ、二酸化炭素を豊富に含む液体の水が内部に閉じ込められているのを世界で初めて発見したとする研究成果を発表しました。研究グループによると、この発見は近年の太陽系形成理論を裏付けるものであり、小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰ったサンプルからも液体の水が見つかる可能性があるといいます。
研究グループが分析を行ったのは、2012年4月22日にカリフォルニア州へ落下した「サッターズミル隕石」です。隕石はその組成によって種類が分かれていますが、サッターズミル隕石は初期の太陽系で形成された物質が含まれているとされる炭素質コンドライトに分類されています。
炭素質コンドライトには有機物の他に「水」も含まれていますが、ここで言う「水」とは、鉱物の結晶構造の中に水酸基(OH、ヒドロキシ基)や水分子(H2O)の形で存在するものを指します。研究グループによると、これまで隕石の中から「液体としての水」が見つかったことはなかったといいます。
今回研究グループは、サッターズミル隕石に含まれている「方解石」と呼ばれる鉱物に着目して分析を行いました。方解石は炭酸カルシウムを主成分とした鉱物で、隕石の母天体(元になった天体)内部における水質変性(水と鉱物の反応)にともなって、水溶液から析出したとみられています。この方解石が成長したときに周囲の水が取り込まれたことで、現在も包有物として水が残されている可能性があるといいます。
分析の結果、サッターズミル隕石から取り出された方解石の内部には1マイクロメートルよりも小さなナノメートルサイズの包有物が無数に存在しており、この包有物は二酸化炭素を15パーセント以上の濃度で含む液体の水(炭酸水)であることが明らかになったといいます。水質変性時に多量の二酸化炭素を含む流体が存在できる条件をもとに、サッターズミル隕石の母天体は直径100km以上と推定されています。
■サッターズミル隕石の母天体は形成後に太陽系の内側へ向けて移動した可能性太陽の周囲には、水や二酸化炭素といった揮発性物質が氷として存在できるか、それとも揮発してしまうかを左右する温度の境界である「雪線(スノーライン)」というものがあります。雪線は物質によってその場所が異なり、水の雪線よりも二酸化炭素の雪線のほうが太陽から遠く、一酸化炭素の雪線はさらに遠くに位置しています。
今回の発見により、サッターズミル隕石の母天体が形成された領域が絞り込まれました。研究グループによると、サッターズミル隕石には水と二酸化炭素は含まれていたものの、一酸化炭素は含まれていなかったことから、母天体が形成された領域は太陽系初期における二酸化炭素の雪線と一酸化炭素の雪線の間だったとみられています。このことから、サッターズミル隕石の母天体は当時の木星よりも外側の領域で形成されたものの、後に木星の軌道が変化した影響を受けて、火星と木星の間にある小惑星帯へと移動したことが考えられるといいます。
かつて、太陽系の天体は現在と同じ軌道で形成されたと思われていましたが、最近では惑星や小惑星の軌道は形成後に変化したと考えられています。研究グループでは、サッターズミル隕石における今回の発見が、近年の新しい太陽系形成理論を裏付ける物質科学的な証拠を示すものだとしています。
また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」がサンプルを採取した小惑星リュウグウは、炭素質コンドライトに対応するC型小惑星に分類されています。研究グループは、2020年12月に地球へ届けられ、今後分析が行われるリュウグウのサンプルから、今回と同様に液体の水が見つかる可能性に言及しています。
関連:昨年アルジェリアで見つかった隕石、太陽系誕生直後の火山岩だった
Image Credit: Tsuchiyama et al.
Source: 立命館大学 / 京都大学 / APOD
文/松村武宏
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