中国のロケット「長征5号B」コアステージ間もなく落下の見込み、独自の宇宙ステーション建設に使用
sorae.jp / 2021年5月5日 21時2分
日本時間2021年4月29日、中国は独自の宇宙ステーション「天宮」の建設に向けてコアモジュール「天和」の打ち上げを実施しました。この打ち上げに使われたロケット「長征5号B」のコアステージが、5月8日~10日にかけて大気圏に再突入する可能性が報じられています。
ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスは5月4日、ロシア国内の専門家による予測として、天和モジュールを打ち上げた長征5号Bコアステージが日本時間5月8日10時~5月10日5時のいずれかのタイミングで大気圏に再突入する見込みであり、再突入に備えてコアステージを追跡していることを明らかにしました。ロスコスモスの声明によると、長征5号Bのコアステージは全長33.2m、重量は約18トンで、5月4日の時点では高度326km×165kmの軌道を89.41分で周回しています。
米企業のエアロスペース・コーポレーションによると、コアステージが再突入するタイミングは日本時間5月9日13時37分の前後28時間(5月8日9時37分~5月10日17時37分、5月5日15時時点での最新予測)で、落下予想地点はメキシコ西方の太平洋上とみられています。再突入のタイミングがずれた場合は北緯41.5度~南緯41.5度にかけての範囲に落下する可能性があるものの、その多くは太平洋、大西洋、インド洋の洋上となっています。
天文学者のJonathan McDowell氏(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)はCNNの取材に対し、人的・物的被害が生じる可能性そのものは無視できないものの、そのリスクはとても小さいとコメント。また、秒速およそ8kmで地球を周回するコアステージがどこに落下するのかを事前に正確に特定するのはほぼ不可能であり、「この場所に落ちる」といった話を耳にしても、少なくとも再突入の数時間前までは信じてはいけないと語っています。
近年ではスペースデブリ(宇宙ゴミ)の増加が懸念されていることから、南太平洋上などにロケットの一部を意図的に落下させる制御落下が行われています。たとえば宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の打ち上げに用いたH-IIBロケットの第2段を制御落下する実験を行っていました。
また、ロケットの一部もしくは全体を再使用する取り組みも進められています。たとえば米スペースXでは同社の「ファルコン9」ロケット第1段の回収・再使用を確立しており、開発中の「スターシップ」ではブースターの「スーパーヘビー」も含めたロケット全体の再使用化を目指しています。
なお、1年前の2020年5月に中国の次世代宇宙船試験機の打ち上げに使われた長征5号Bのコアステージは、大西洋上で大気圏へ再突入した後に複数の破片がアフリカ西部のコートジボワールへ落下したとみられています。中国の宇宙ステーション「天宮」は複数のモジュールから構成されるもので、今後計画されている実験モジュール2基の打ち上げにも長征5号Bが使われる予定です。
関連:
・中国独自の宇宙ステーション建設開始 コアモジュールの打ち上げ成功 近く有人宇宙飛行も
・長征5号Bのコアステージは大西洋上で再突入、破片が地上に落下した可能性
Image Credit: NASA
Source: Roscosmos / Aerospace / CNN
文/松村武宏
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