ビッグバンや超新星爆発の名残があなたの身体にも? 元素の起源
sorae.jp / 2021年6月1日 21時11分
あなたの身体を作っている元素はどこから来たのか知っていますか?
身体の中にある水素(元素記号:原子番号=H:1)は、水の分子の中にも含まれていますが、元々はビッグバンで生まれたものです。宇宙には他に水素の供給源はありません。
体内の有機化合物の骨格である炭素(C:6)は星の内部での核融合によって作られ、酸素(O:8)も同様です。血液中などの鉄分として知られる鉄(Fe:26)の多くは、はるか昔に起きた星の超新星爆発で作られました。また、リン(P:15)や銅(Cu:29)などの元素は、私たちの体内にはわずかしか存在しませんが、生命の維持には欠かせないものです。
アクセサリーや金歯に使われている金(Au:79)は、短時間のガンマ線バーストや重力波として観測された中性子星の合体で作られたと考えられています。
![Nucleosynthesis2_WikipediaCmglee_1080(Credit:Wikipedia: Cmglee; Data: Jennifer Johnson (OSU))](https://sorae.info/wp-content/uploads/2021/06/202106_Nucleosynthesis2_WikipediaCmglee_1080.jpg)
【▲ 元素の起源の比率に応じて色分けされた周期表(Credit: Wikipedia: Cmglee; Data: Jennifer Johnson (OSU))】
この周期表は、プルトニウム(Pu:94)までの全元素(濃いグレーで色分けされた元素は除く)の起源に関する推測を色分けしたものです(データはオハイオ州立大学のJennifer Johnson教授の研究に基づいています)。銅のようないくつかの元素の生成場所は実際にはよく知られておらず、観測や計算による研究が続けられています。
なお、各元素の欄は10×10=100のマス目に分けられていて、その起源(由来)の比率に応じて色別に塗り分けられています(濃いグレーは除く)。
色別の意味はそれぞれ
・青色(Big Bang fusion):ビッグバン
・緑色(Dying low-mass stars):低質量星の死
・黄色(Exploding massive stars):大質量星の爆発
・ピンク(Cosmic ray fission):宇宙線による核分裂
・紫色(Merging neutron stars):中性子星の合体
・薄いグレー(Exploding white dwarfs):白色矮星の爆発
となっています。
この周期表を見ると、わたしたちの身体を作っている元素は、元をたどれば宇宙に存在している星々に由来していることは確かなことでしょう。あなたの身体の中にはビッグバンや超新星爆発の名残が存在していて、人間や生命が「星屑から生まれた」と言われる所以(ゆえん)となっています。
こちらの画像は「延髄星雲」(Medulla Nebula)と呼ばれる超新星爆発の残骸で、カシオペア座の方角にあり、地球から見たその広がりは満月ほどにもなります。
![Medulla_Croman_960(Credit:Russell Croman)](https://sorae.info/wp-content/uploads/2021/06/202106_Medulla_Croman_960.jpg)
【▲「延髄星雲」(Medulla Nebula)と呼ばれる超新星爆発の残骸(Credit: Russell Croman)】
このような超新星爆発などから元素が作られ、その元素によって生命や人間が生まれました。そしていま、その人間の脳が宇宙の果てに「脳」のような姿をした星雲を発見しているのです。そう思うと、宇宙の輪廻のようなものを感じてしまいます。
しかし、近年、宇宙には大量の「ダークマター」などの存在が示唆されており、それが元素に基づいた物質であるかどうかは謎であり、今後の研究に委ねられています。
Image Credit: Wikipedia: Cmglee; Data: Jennifer Johnson (OSU)、Russell Croman、Shutterstock
Source: APOD (1) (2)、NASA、Jennifer Johnson(Ohio State University:OSU)
文/吉田哲郎
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