細胞を構成する物質、天の川銀河中心付近で発見される
sorae.jp / 2021年6月3日 21時0分
生物を定義づける特徴の一つは、生物は細胞から成り立っているということです。細胞は細胞膜によって外界と隔てられていて、細胞の内部で様々な生命活動が営まれています。
現在の細胞膜はリン脂質による二重層の構造になっていますが、最初の膜の性質やリン脂質の起源についてはいまだに議論が続いています。
このたび米国科学アカデミーの紀要に発表された論文によると、スペインやイタリアなどから成る国際的な研究チームは、リン脂質の親水性(水との親和性が大きいこと)の頭部を形成する分子の一種であるエタノールアミン(NH2CH2CH2OH)を天の川銀河の中心付近に位置する分子雲で検出しました。ミリ波電波天文学研究所(Institut de Radioastronomie Millimétrique:IRAM)および Yebes 電波望遠鏡による観測データの分析結果によるものです。
これまでの研究でも、エタノールアミンは隕石の中に発見されたことが報告されていますが、今回の研究結果はエタノールアミンが深宇宙空間でも形成された可能性を示唆しています。もし、このエタノールアミンが初期の地球に運ばれていたならば、生命の誕生に必要な原始的な膜の組み立てや、初期の生物進化に貢献した可能性があります。
この研究結果を聞くと、地球の生命は地球外の場所(他の天体など)で発生したとする「パンスペルミア」説を思い浮かるかもしれません。しかし、あくまで、細胞(細胞膜)を構成するエタノールアミンという物質が検出されたものであり、何らかの生命体や、それに直接つながる証拠が検知されたものではないことに注意が必要です。
関連:宇宙空間で微生物が数年以上生存する可能性、パンスペルミア説を支持する実験結果
しかしながら、地球以外の惑星にもエタノールアミンが運ばれた可能性があるため、他の惑星での生命の起源を考える上で意義があると言えるでしょう。
Image Credit:NASA/JPL-Caltech, Víctor M. Rivilla and Carlos Briones
Source: PANS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA)
文/吉田哲郎
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