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131億年前の銀河で吹き荒れる大規模な銀河風 国立天文台が観測

sorae.jp / 2021年6月12日 21時36分

銀河の中心にある超大質量ブラックホールによって引き起こされた銀河サイズの強烈な銀河風が吹き荒れるようすを描いたイラスト。(Image Credit:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) )

【▲ 銀河の中心にある超大質量ブラックホールによって引き起こされた銀河サイズの強烈な銀河風が吹き荒れるようすを描いたイラスト。(Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) )】

国立天文台などは6月11日、131億年前の銀河において、その中心にある超大質量ブラックホールによって引き起こされた銀河サイズの強烈な銀河風が吹き荒れていることを発見したと発表しました。この銀河は、J1243+0100と呼ばれる銀河で、このような銀河風が発見された銀河としては、観測史上最古のものになるといいます。

■銀河風とは?

銀河の中心にある超大質量ブラックホールにガスなどが落ち込むときに、ガスなどは渦を巻きながら、ブラックホールに吸い込まれていきます。この渦を降着円盤といいます。

この降着円盤は、摩擦によって莫大な熱が発生し、ガスなどが非常に高温になるために、X線、紫外線などさまざまな光(電磁波)で強烈に光り輝きます。この光の圧力により押されてブラックホールの周辺からガスが噴き出すのが銀河風です。(ただし、銀河風の形成原因はこれだけではなく他にもあります)

ところで銀河の中心部(バルジ)とその銀河の中心にある超大質量ブラックホールとの質量の比率はほぼ一定です。重い銀河の中心にある大質量ブラックホールは重く、軽い銀河の中心にある超大質量ブラックホールは軽いのです。このことから、銀河とその中心にある超大質量ブラックホールは互いに物理的に影響し合いながら共に進化してきたと考えられています。

銀河風は、恒星をつくる材料となる銀河内の星間ガスを銀河外に吹き飛ばしてしまうために、恒星を生まれにくくします。そのため、このような共進化において重要な役割を果たしてきたと考えられています。

■銀河サイズの強烈な銀河風が吹き荒れる131億年前の銀河J1243+0100とは? アルマ望遠鏡によって観測されたJ1243+0100の画像。今回発見された銀河風は青く着色されています。(Image Credit:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Izumi et al.)

【▲ アルマ望遠鏡によって観測されたJ1243+0100の画像。今回発見された銀河風は青く着色されています。(Image Credit:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Izumi et al.)】

まず研究チームはすばる望遠鏡を使って中心に超大質量ブラックホールを持つ130億年以上前の銀河を100個以上発見しました。

そして、その中の1つ、131億年前の銀河J1243+0100について、アルマ望遠鏡を使って観測し、炭素イオンが放つ電波からガスの動きを分析したところ、銀河サイズの強烈な銀河風が吹き荒れていることを発見しました。その「風速」は500km/sにもなるといいます。

このような銀河風がみつかった銀河としては、J1243+0100は観測史上最古のものになります。

このようなJ1243+0100の中心部分(バルジ)とJ1243+0100の中心にある超大質量ブラックホールの質量の比率は100:1ほどと推定されています。これは現在の銀河におけるその比率とほぼ一致しています。このことから、研究チームによれば、宇宙の誕生から10億年もたたずに、銀河と超大質量ブラックホールの共進化がおきていたことが示唆されるといいます。

研究チームでは、今後、さらに観測を続け、今回みえてきた原始的な共進化が当時の宇宙において普遍的なものであったのかどうか明らかにしていきたいとしています。

 

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Izumi et al.
Source: 国立天文台/アルマ望遠鏡
文/飯銅重幸

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