学生大気球プロジェクト、成層圏で炎を灯すことに失敗… 9月に再挑戦予定
sorae.jp / 2021年7月4日 12時31分
6月26日午前9時45分、昨年紹介した(記事は最下部参照)学生による大気球利用計画のアースライトプロジェクト(Earth Light Project)の気球放球が、茨城県東茨城郡大洗町の大洗サンビーチで行われました。
放球から回収までの流れはうまくいったものの、主目的である「成層圏での炎の点火と生中継」は失敗しました。同プロジェクトでは9月にも再チャレンジをするべく準備を行うと述べています。
■飛行概要この飛行に用いられたのは大型のゴム気球で、地上での直径は約3m。上空に行くに従って周りの気圧が下がるために徐々に膨らんで、破裂直前の直径は11mになります。中に詰めるのはヘリウムガスで、総量15000リットルです。気球下部には、炎を灯したり録画をしたり電波を送信したりする機材を収めたスチロール製の箱が、頑丈なケーブルで吊されています。
当初は午前9時に放球する予定でしたが、最終確認において燃焼器の点火がされないトラブルが起きたことと、インターネット中継の機材不備が重なったため、当初の予定より45分遅れての放球となりました。放球時は特別の治具は使わず、ガス充填時より人力で押さえていた手を離すと、ふわりと舞い上がっていきました。
気球はほぼ東に向かって飛び、10時20分に最高高度に達したあと破裂、午前10時54分、ひたちなか市の東64kmの太平洋上に落下し回収されました。
放球から着水までの飛行時間は1時間9分、到達高度は約20kmでした。計画では高度約30kmまで昇る予定だったので、かなり低い高度で気球が破裂したことになります。大型気球は安全のため、ある直径になると破裂するように作られていますから異常ではありません。想定よりも低い高度になってしまった原因は、台風が近づいていた事による気圧低下や製造上のばらつきなどの原因が考えられます。今後究明され、対策が立てられることでしょう。
炎を灯す機構や録画機材を収めたペイロード部分は無事に回収されました。
回収に当たっては地元の漁協や漁師に協力を仰ぎ、鹿島港から漁船をチャーターしたとのことです。気球の現在位置はGPSで把握しており、その情報を元に洋上回収を行いました。
■計画の概要と今後の予定アースライトプロジェクトは学生主体のプロジェクトで、「分断する世界を憂え、統合の象徴として成層圏で丸く見える地平線をバックに炎を灯し、配信する」ことを目的に計画を進めてきました。当初は沖縄の宮古島からの放球を計画していましたが、社会情勢によって変更し、大洗海岸からの放球に切り換えました。
気球や通信機は既存のものを購入・レンタルしていますが、炎を灯す装置など、要素技術の開発は学生主体で行っています。プロジェクトメンバーは全国に232名おり、そのうち放球時に大洗海岸に42名、回収船に3名がいたとのことです。
このプロジェクトは実行資金をクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で集めました。終了までの総額は1059万4566円にのぼります。プロジェクト広報に尋ねたところ、今回の放球に掛かった費用は、技術開発が650万円程度、配信に15万円程度、その他に25万円程度とのことですから、余剰資金は約360万円。これを使って改良等を行い、9月頃を予定している次回の放球に臨みます。
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Image Credit: アースライトプロジェクト、東京とびもの学会
文/金木利憲
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