木星の40年来の謎「X線オーロラ」解明 プラズマ波で「サーフィン」する粒子が起因
sorae.jp / 2021年7月18日 22時23分
UCL(University College London)と中国科学院(Chinese Academy of Sciences)を中心とした研究チームは、木星が数分ごとにX線を放出する仕組みについて、数十年来の謎を解明しました。
このX線は、木星のオーロラの一部で、荷電粒子が木星の大気と相互作用する際に発生する可視光線と不可視光線(赤外線と紫外線)のバーストです。
地球上でも同様の現象が起こり、オーロラが発生しますが、木星のオーロラはそれよりもはるかに強力で、数百ギガワットものエネルギーを放出します。これは人類のすべての文明に短時間電力を供給するのに十分なほどです。
2021年7月9日付けで「Science Advances」誌に掲載された研究によると、研究チームは、X線フレアが木星の磁力線の周期的な振動によって引き起こされることを発見しました。この振動によってプラズマ波が発生し、重イオン粒子が磁力線に沿って「サーフィン」しながら木星の大気に衝突し、X線という形でエネルギーを放出するのです。
こちらは、木星のX線オーロラ発生の仕組みを説明した冒頭の画像をアニメーション化した動画です。
UCLマラード宇宙科学研究所(UCL Mullard Space Science Laboratory)のWilliam Dunn博士は、次のように述べています。
「木星がX線オーロラを発生させていることは40年前から確認されていましたが、どのような仕組みで発生しているのかはわかっていませんでした。イオンが木星の大気に衝突したときに発生することしか知られていなかったのです」
「今回、イオンがプラズマ波によって運ばれていることがわかりました。これまで提案されていなかった説明ですが、同様のプロセスで地球独自のオーロラが生成されます。したがって、それは宇宙の多くの異なる環境にも存在する普遍的な現象である可能性があります」
X線オーロラは木星の北極と南極で発生しますが、時計のように規則正しく発生することが多く、今回の観測では27分ごとにX線のバーストが発生していました。
大気圏に突入するイオン粒子は、木星の衛星イオの巨大な火山から宇宙空間に放出された火山ガスに由来しています。このガスは、木星大気との衝突によりイオン化し、木星を取り囲むドーナツ状のプラズマを形成しています。
共同研究者で中国科学院のZhonghua Yao博士は次のように述べています。
「この基本的なプロセスが明らかになったことで、次の研究対象の可能性が大きく広がりました。同様のプロセスは、土星、天王星、海王星、そしておそらく太陽系外の惑星でも発生している可能性があり、さまざまな種類の荷電粒子が波に乗ってサーフィンしていると考えられます」
また、論文の共著者であるGraziella Branduardi-Raymont教授(UCLマラード宇宙科学研究所)は「X線は通常、ブラックホールや中性子星のような非常に強力で激しい現象により生成されるので、単なる惑星でもX線が生成されるのは不思議に思えます」と述べています。
「ブラックホールまで宇宙旅行はできないので、わたしたちが訪れることはできませんが、木星はわたしたちの目と鼻の先にあります。NASAのジュノー(Juno)衛星が木星軌道に到達したことで、天文学者はX線を生成する環境を間近で研究できる素晴らしい機会を得たのです」
今回の研究では、ジュノー衛星とESAのX線観測衛星XMMニュートン(XMM-Newton)が26時間かけて連続的に行った木星とその周辺環境の観測を分析しました。
その結果、ジュノーが検出したプラズマ波と、XMMニュートンが記録した木星の北極でのX線フレアとの間に、明確な相関関係があることを発見しました。そして、この波が重イオン粒子を木星の大気に向かって走らせることを、コンピュータ・モデリングによって確認したのです。
なぜ磁力線が周期的に振動するのかは不明ですが、太陽風との相互作用や木星の磁気圏内の高速プラズマ流に起因する可能性があります。
木星の磁場は地球の約2万倍と非常に強いため、その磁場に支配されている領域である磁気圏は非常に大きくなっています。それが夜空に見えるとしたら、わたしたちが眺めている月の数倍の大きさの領域を覆っていることになります。
関連:「ジュノー」が明らかにした木星の壮大なオーロラの起源
Video Credit: ESA
Image Credit: ESA / NASA / Yao / Dunn、NASA Chandra / Juno Wolk / Dunn
Source: UCL(University College London) / 論文、ESA
文/吉田哲郎
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