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【後編】火星の内部構造が明らかに NASAインサイトのデータより

sorae.jp / 2021年8月13日 17時0分

【▲ インサイトに搭載された超高感度の地震計SEISの画像。その上を火星の雲が吹き流れていっています。(Image Credit:NASA/JPL-Caltech)】

【前編】火星の内部構造が明らかに NASAインサイトのデータより

では、研究チームはどのようにして火星の内部構造を明らかにしたのでしょうか?キーワードは火震です。

■火震とは?

実は火星にも地震があります。火震といいます。

インサイトにはSEIS(the Seismic Experiment for Interior Structure)と呼ばれる超高感度の地震計が装備されていますが、火震は2019年にこのSEISによって初めて確認されました。

地球の地震は断層で発生しますが、地球の断層は複数の構造プレートが擦れ合いながら動くことで歪がたまり割れ目ができてつくられます。

しかし、火星には構造プレートはありません。では、火星の断層はどのようにしてつくられるのでしようか?

実は、火星は現在でも冷えて少しづつ縮み続けています。そのため地殻が引っ張られて割れ目ができます。これが火星の断層です。

火震はこのような断層で発生します。

そして、おもしろいことに、研究チームによれば、SEISに検知された最も重要な火震は全てサーベラス・フォッサと呼ばれる地域で発生しているようにみえるといいます。この地域は、活火山地帯で、直近の数百万年の間に溶岩が流れた可能性があることが指摘されています。

研究チームは、SEISによって記録されたこのような733個の火震のなかから、マグネチュード3から4にあたる、35 個の火震のデータを使って、火星の内部構造を詳しく調べました。

■火震からどうして火星の内部構造が解るの?

【▲ インサイトのSEISによって記録された震動記録(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

では、なぜ火震によって火星の内部構造が解るのでしょうか?

火星の内部を伝わってくる地震波には、P波(primary waves)とS波(secondary waves)があります。P波はS波よりも早く伝わるために、まずP波が観測され、その後にS波が観測されます。また、これらの地震波が火星の内部で反射体(reflector)に当たって跳ね返ってきた「こだま(echo)」もあります。

これらの地震波は、火星の内部で、異なった物質からなる層を通過すると、その物質に応じて速さと波形が変化します。

研究チームはこのような地震波を詳しく調べることで、火星の内部構造を明らかにしたというわけです。

研究チームでは、現在、マグネチュード4を超えるような大きな地震の検知を期待しています。地震の規模が大きくなれば、それだけ容易に火星の内部構造を調べることができるためです。

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/飯銅重幸

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