35光年先の系外惑星を詳細に観測、ハビタブルゾーン内に新たな惑星が存在か
sorae.jp / 2021年8月7日 19時26分
南天の「とびうお座」の方向およそ35光年先にある赤色矮星「L 98-59」の周囲では、アメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」によるトランジット法(後述)を利用した観測データをもとに、地球に近いサイズの太陽系外惑星が3つ見つかったことが2019年に発表されています。
関連:地球と火星の中間サイズの系外惑星を発見。TESSミッションで最小記録を更新
今回、ポルト大学のOlivier Demangeon氏らの研究グループは、L 98-59系で発見済みの3つの系外惑星に関する新しい観測結果に加えて、新たに1つの系外惑星が見つかったことと、さらにもう1つの系外惑星が存在する可能性を示した研究成果を発表しました。
■視線速度法で観測された系外惑星としては最も軽かった「L 98-59b」系外惑星の性質を調べる上で、そのサイズと質量から算出される平均密度は重要な情報です。平均密度がわかれば、その惑星を構成する物質の組成を推定できるからです。「もしも惑星が何でできているのかを知りたければ、最低でも質量と半径を知る必要があります」(Demangeon氏)
今回、研究グループはヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」による視線速度法(後述)を用いた観測データを利用することで、L 98-59系ですでに見つかっている3つの系外惑星「L 98-59b」「L 98-59c」「L 98-59d」の質量を割り出すことに成功しました。
研究グループによると、最も内側を公転するL 98-59bの質量は地球の約0.40倍で、これまでに視線速度法を利用して観測された系外惑星としては最も軽いとされています。また、その外側を公転するL 98-59cの質量は地球の約2.22倍、さらに外側のL 98-59dの質量は地球の約1.94倍であることが判明しました。なお、3つの系外惑星の半径は地球の約0.850倍(L 98-59b)、約1.385倍(同c)、約1.521倍(同d)とされています。
▲質量の最大30パーセントを水が占める可能性があるL 98-59dの想像図▲
(Credit: ESO/M. Kornmesser)
3つの惑星はいずれも主星であるL 98-59に近く、表面温度は地球よりもずっと高い(平衡温度は摂氏およそ140~350度)とみられていますが、研究グループは今回の観測結果をもとに、3つの惑星の内部もしくは大気中に水が含まれている可能性があると考えています。
特に、3つのうち一番外側のL 98-59dは質量のうち最大30パーセントを水が占めるとみられていて、海洋惑星(深い海に覆われた惑星)の可能性があるといいます。いっぽう、内側のL 98-59bとL 98-59cは乾燥していて、含まれる水の量は少ないと推測されています。
また、研究グループはL 98-59系で4つ目となる系外惑星「L 98-59e」を発見しました。L 98-59eのサイズは今のところ不明ですが、質量は地球の約3.06倍以上、公転周期は約12.8日とされています。さらに、L 98-59eの外側にもう1つの系外惑星が存在する可能性も研究グループは指摘しています。推定される最小質量は地球の約2.46倍、公転周期は約23.2日で、もしも存在すればL 98-59の周囲に広がるハビタブルゾーンの真ん中に位置するとされており、今後の観測結果が注目されます。
■トランジット法&視線速度法とはこれまでに見つかった4400個以上の系外惑星のなかには直接撮影されたものもありますが、その多くは「トランジット法」や「視線速度法」(またはドップラー法)といった間接的な手法を用いて検出されてきました。
トランジット法とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を検出する手法のこと。最初にL 98-59系の系外惑星を発見したTESSはこの手法を用いています。
▲系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画▲
(Credit: ESO/L. Calçada)
もう一つの視線速度法とは、系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きのうち、地球から見た視線方向の動きを主星の光のわずかな変化(主星が地球に近付くように動く時は光の色が青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽく変化する)をもとに捉えて、系外惑星を検出する手法です。
関連:4000を超える太陽系外惑星の発見を時系列で総覧 NASAのアーカイブデータ
Image Credit: ESO/M. Kornmesser
Source: ESO
文/松村武宏
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