NASA火星探査車「Perseverance」初のサンプル採取で問題発生、サンプルが容器に入らず
sorae.jp / 2021年8月11日 11時33分
火星探査の難しさを改めて実感させられます。2021年8月6日、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」は、火星のジェゼロ・クレーターで初のサンプル採取を実施しました。NASAによると、保管容器に入るはずだった岩石のサンプルが入っていなかったことが判明。現在その原因究明が進められています。
2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターへ着陸したPerseveranceは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査ミッション「マーズ2020」の探査車(ローバー)です。マーズ2020の主な目的は火星に存在していたかもしれない微生物の痕跡を探すことですが、NASAは欧州宇宙機関(ESA)と共同で火星からのサンプルリターンミッションを計画しており、Perseveranceは火星探査史上初めて地球に運ばれる火星のサンプルを採取するという重要な役割も担っています。
関連:火星探査車「Perseverance」について知っておきたい7つのこと
▲Perseveranceによるサンプル採取の仕組みを解説した動画(英語)▲
(Credit: NASA-JPL/Caltech)
サンプルはPerseveranceに43本搭載されているチューブ状の保管容器に封入された上で、将来送り込まれる予定の回収用の探査車に拾い上げられることを見越してジェゼロ・クレーターの地表に安置されることになっています。
サンプルの採取時には、Perseveranceの車体に組み込まれているAdaptive Caching Assembly(ACA)で加熱処理された空のチューブが、ロボットアーム先端に取り付けられている円筒形のコアリングビット内部にセットされます。この状態でコアリングビットが回転して岩石を掘削することで、チューブの内部に岩石のサンプルが入るという仕組みです。サンプルが入ったチューブはコアリングビットからACAに戻され、体積の測定と写真撮影が行われた後に密閉・保管されます。
今回実施された第1回サンプル採取では、コアリングビットにチューブをセットして岩石を掘削することはできたものの、サンプルがチューブ内部に入らなかったことになります。Perseveranceから送られてきたデータは、サンプルの採取とその後のチューブの処理が計画通り行われたことを示しているといいます。Perseveranceのプロジェクトマネージャーを務めるジェット推進研究所(JPL)のJennifer Trosper氏は、予定通り動作したPerseveranceのハードウェアに問題がある可能性は低く、サンプル採取のターゲットに選んだ岩石の掘削中のふるまいが予想通りではなかった可能性に触れています。
NASAが火星に送り込んだすべての探査車によるミッションに関わってきたというTrosper氏は「複雑な動作を初めて実施する際に問題が起きるのは珍しいことではありません」と語っています。また、NASA科学ミッション本部副本部長のThomas Zurbuchen氏は、編成された対応チームがこの問題に適任であることを確信していると述べるとともに、「将来の成功を確実なものとする解決策に向けて、私たちは耐え抜くでしょう」とコメントしています。
なお、火星探査における想定外の問題というと、最近ではエリシウム平原で延長ミッションを行っているNASAの火星探査機「InSight(インサイト)」を思い出します。
火星地震計「SEIS」(Seismic Experiment for Interior Structure)が搭載されているインサイトは、火星で初の地震を検出するという大きな成果を上げています。いっぽう、火星の地下5mでの熱流量測定を目指して搭載されていた地中熱流量計測装置「HP3」(Heat Flow and Physical Properties Package)の地中センサー部分は、想定外にふるまう地下の土壌から摩擦を得ることができず、崩れた土によって穴から押し戻されてしまいました。運用チームの努力によってセンサー全体が地面の下に埋もれるところまでは掘り進めたものの、それ以上前進することはできず、HP3は2021年1月に運用を終えています。
関連:火星地下への穴掘りを断念。探査機インサイトがミッションの一部を終える
Perseveranceのサンプル採取については、新たな情報が発表され次第お伝えする予定です。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
火星の衛星は崩壊した小惑星の破片から形成された? 新たな研究が示唆
sorae.jp / 2024年11月22日 21時7分
-
ボイジャー2号が観測した天王星は確率4%のめずらしい状態だった可能性 太陽活動の影響か
sorae.jp / 2024年11月15日 11時2分
-
あけおめ!? 2024年11月12日から火星の新しい1年が始まる
sorae.jp / 2024年11月12日 21時0分
-
NASA火星探査車Perseveranceが撮影したパノラマ 3年半の探査活動がこの1枚に
sorae.jp / 2024年11月4日 21時56分
-
光合成をする微生物が火星表面下の“水たまり”で生存できる可能性 最新の研究が示唆
sorae.jp / 2024年11月2日 22時33分
ランキング
-
1「一人暮らしの老後」を充実させるコツ3つ
オールアバウト / 2024年11月28日 21時40分
-
2ホコリが積もると火事に…コンセント周辺の掃除をサボると危険! 確認すべき5つのポイント
オトナンサー / 2024年11月28日 20時10分
-
3日本株に“トランプ・ショック”直撃か…「関税引き上げ」に国内経済界は戦々恐々
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月28日 16時3分
-
4『推しの子』終盤展開の問題 実写やアニメで「改変」を望む声が出ているのは何故なのか
マグミクス / 2024年11月28日 20時55分
-
5急な「めまい」発作の"引き金"となる6つの要因 とくに急激な「気圧の変化」には注意が必要
東洋経済オンライン / 2024年11月28日 20時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください