10億光年先の「踊るお化け」の正体 深宇宙探査は新たな発見と驚きに満ちている
sorae.jp / 2021年8月12日 22時49分
約10億光年離れた深宇宙で手をつないで「踊るお化け」! これはいったい何なのでしょうか?
その正体は、宇宙の奥深くにある銀河を取り囲んでいる奇妙な電子の雲なのです。ウェスタン・シドニー大学(Western Sydney University)とオーストラリア国立科学研究機関(CSIRO:Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation)の研究者たちが、CSIROのASKAP(Australian Square Kilometre Array Pathfinder)電波望遠鏡を用いた初の深宇宙探査の一環として発見しました。
「最初に“踊るお化け”を見たときは、それが何なのかわかりませんでした。何週間もかけて、約10億光年先の2つの“ホスト”銀河を見ていることがわかりました。その中心には2つの超巨大ブラックホールがあり、電子のジェットを噴出し、それが銀河間の風によってグロテスクな形に曲げられているのです」とウェスタン・シドニー大学とCSIROの主任研究者であるRay Norris教授は語っています。
「しかし、新しい発見は常に新たな疑問を引き起こしますが、今回も同様です。風がどこから吹いているのか、なぜこんなにも絡まっているのか、その謎はまだわかっていません。また、何が電波放射の流れを引き起こしているのでしょうか? これらを理解するには、さらに多くの観測とモデリングが必要になるでしょう」
この発見は、「宇宙の進化地図」(Evolutionary Map of the Universe:EMU)プロジェクトの最初のパイロット調査について、オーストラリア天文学会に受理された論文の中で述べられたものです。Norris教授によると、今回の深宇宙探査で発見されたいくつかの天体や現象の一つなのです。
「EMUプロジェクトの一環として空をスキャンし、これまでのどの望遠鏡よりも深く宇宙を探っているので、驚きには慣れてきました。さらにどの望遠鏡も探ったことのない場所に果敢に挑戦すれば、新しい発見があるかもしれません」と語っています。
深宇宙探査は謎が謎を呼び、研究者にとっても新たな発見と驚きに満ちているのです。
Image Credit: Western Sydney University、CSIRO/Alex Cherney
Source: Western Sydney University、University of California, Santa Cruz
文/吉田哲郎
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