NASA火星探査車「Perseverance」初のサンプル採取では岩がもろくて砕けてしまった可能性
sorae.jp / 2021年8月14日 17時39分
【▲ 火星探査車「Perseverance」がサンプル採取のために空けた掘削孔(中央右)(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
既報の通り、アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間2021年8月6日、火星探査ミッション「マーズ2020」の探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」による初のサンプル採取を、火星のジェゼロ・クレーターに設定された「Crater Floor Fractured Rough」と呼ばれるエリアで実施しました。Perseveranceのハードウェアは計画通り動作したものの、岩石のサンプルが保管容器に入っていなかったことが判明し、原因究明が進められていました。
関連:NASA火星探査車「Perseverance」初のサンプル採取で問題発生、サンプルが容器に入らず
ジェット推進研究所(NASA/JPL)のエンジニアLouise Jandura氏は現地時間8月11日、現時点における結論をマーズ2020ミッションのブログで明らかにしました。Jandura氏によると、サンプル採取時に岩石に空いた掘削孔をPerseveranceのロボットアーム先端に取り付けられているカメラ「WATSON」を使って調べた結果、岩石がもろくて掘削時に細かく砕けてしまったため、保管容器内部にサンプルが残らなかったことが考えられるといいます。
▲Perseveranceによるサンプル採取の仕組みを解説した動画(英語)▲
(Credit: NASA-JPL/Caltech)
Perseveranceによるサンプル採取の流れは次の通りです。まず、Perseveranceの車体に組み込まれているAdaptive Caching Assembly(ACA)で加熱処理された空のチューブが、ロボットアーム先端に取り付けられている円筒形のコアリングビット内部にセットされます。次に、チューブがセットされた状態のコアリングビットが回転して岩石を掘削することで、チューブの内部に棒状のコアサンプルが残ります。その後、サンプルが入ったチューブはコアリングビットからACAに戻されて、体積の測定と写真撮影が行われた後に密閉・保管されます。地球・火星間の通信には数分以上のタイムラグが生じるため、これらの動作はすべて自律的に実行されます。
![【▲ Perseveranceに搭載されているサンプルチューブの外観。掘削時、サンプルは図に描かれたチューブの右端から内部に入る(Credit: NASA/JPL-Caltech)】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2021/08/nasa-perseverance-sample-tube-labeled.jpg)
【▲ Perseveranceに搭載されているサンプルチューブの外観。掘削時、サンプルは図に描かれたチューブの右端から内部に入る(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
![【▲ サンプルチューブの断面図。チューブの内部にはサンプルが入っており、またチューブの端は密封されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2021/08/nasa-perseverance-sample-tube-interior-labeled.jpg)
【▲ サンプルチューブの断面図。チューブの内部にはサンプルが入っており、またチューブの端は密封されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
Jandura氏によると、今回のサンプル採取のターゲットに選ばれた岩石はそれほど丈夫ではなく、コアサンプルとして採取されるはずだった部分が掘削時に小さな破片や粉末状に砕けてしまい、チューブの内部には残らなかったとみられています。付近の地表を撮影した画像にはチューブから抜け落ちたコアサンプルやその破片らしきものが見当たらないことから、砕けてしまったコアサンプルは掘削孔の底かその周辺に落ちていると予想されています。
また、地球上で100回以上実施された掘削テストの結果と比較して、今回の岩石の掘削やそれに先立つ岩石表面の研磨といったPerseveranceのハードウェアの動作には、異常がみられなかったとされています。
![上から覗き込んだ掘削孔の様子。太陽光の影響を避けるべく夜間にLEDライトを点灯して撮影した複数の画像をもとに作成したもの(Credit: NASA/JPL-Caltech)](https://sorae.info/wp-content/uploads/2021/08/nasa-perseverance-sample-borehole-2.jpg)
【▲ 上から覗き込んだ掘削孔の様子。太陽光の影響を避けるべく夜間にLEDライトを点灯して撮影した複数の画像をもとに作成したもの(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
「ハードウェアはコマンド通りに働きましたが、今回は岩が協力してくれませんでした」と綴るJandura氏は、9月上旬に予定されている新たな地点「South Seitah」におけるサンプル採取に期待を寄せています。Perseveranceと火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」がこれまでに撮影した画像をもとに、South Seitahでは地上での掘削テストの状況に近い堆積岩に遭遇する可能性があるようです。
なお、マーズ2020の主な目的は火星に存在していたかもしれない微生物の痕跡を探すことですが、NASAは欧州宇宙機関(ESA)と共同で火星からのサンプルリターンミッションを計画しており、Perseveranceは火星探査史上初めて地球に運ばれる火星のサンプルを採取するという重要な役割も担っています。サンプルが入ったチューブは将来送り込まれる予定の回収用の探査車に拾い上げられることを見越して、ジェゼロ・クレーターの地表に安置されることになっています。
関連:火星探査車「Perseverance」について知っておきたい7つのこと
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
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