小惑星の衝突による「大量絶滅」を生き延びたヘビの生存戦略と多様化
sorae.jp / 2021年9月25日 22時30分
ある特定の時期に何らかの原因で、多くの種類の生物が同時に絶滅することは「大量絶滅」と呼ばれています。
地球の歴史上で大量絶滅は何度もあったと考えれていますが、繁栄を極めていた恐竜を突然絶滅に追いやった中生代白亜紀末(約6,600万年前)の大量絶滅はよく知られています。
その大量絶滅の原因は諸説あるものの、小惑星が地球に衝突(隕石が落下)したことによるとする説が有力視されています。当時生存していた生物種の内、どの程度の割合が絶滅したのか、これも諸説ありますが、恐竜はほぼ完全に絶滅したと考えられています。
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この度、バース大学(University of Bath)の科学者が主導した研究では、この大量絶滅を生き延びたヘビの進化について興味深い知見が紹介されています。この研究では、化石を用いて現代のヘビの遺伝子の違いを分析し、ヘビの進化を再構築しました。この分析により、現代のヘビが進化した時期を特定することができました。
現在、ヘビは4,000近い種が知られています。その内の約20%は過去10年間に発見されたものであり、さらに毎年十数種が新たに発見されているとのことです。ヘビは砂漠、熱帯雨林、草地、深海など、生息地も多様です。ヘビは昆虫、無脊椎動物、魚、カエル、鳥、小型哺乳類などの小さな脊椎動物を捕食し、数種のヘビは大型哺乳類(時には人間)も食べます。ヘビはまた、這う、穴を掘る、登る、泳ぐことができます。空を飛ぶ(滑空する)ヘビもいます。
ヘビの祖先は1億年以上前にまで遡ります。従来の知識では、この大量絶滅により恐竜は絶滅しましたが、両生類や爬虫類のような他の多くのグループには比較的影響を与えなかったと考えられていました。大きな生物が絶滅しただけで、小さな生物は大きな影響を免れていたというのです。
しかし、ヘビの化石の記録はそうではなかったことを示唆していると言います。本研究結果によると、現在のヘビの祖先は、6,600万年前の小惑星による衝突を生き延びた、ほんの一握りの種(5、6種)にまで遡ることを示しています。
小惑星が衝突した後の世界は、がれきが積もり塵が舞い、食物も不足していたと考えられます。日射量は大幅に減少し、その結果、地球の寒冷化を引き起こしたと考えられています。光合成が停止し植物も生長できなくなりました。
そのような環境の中で、ヘビは地下に身を隠し、寒さから身を守ることができました。長期間食べ物を食べずにいられる能力を持っていたことも、破滅的な影響から生き残るのに役立ったと論文の著者らは主張しています。
白亜紀の恐竜を含む捕食者や競争相手が絶滅したことで、生き延びたヘビは新たなニッチ、新たな生息地、新たな大陸へと移動することができたのです。その後、ヘビは多様化しはじめ、毒ヘビ、コブラ、ガーターヘビ、ニシキヘビ、ボアなどの系統を生み出し、新しい生息地や新しい獲物を利用するようになりました。現代のヘビの多様性は、恐竜が絶滅した後に出現したものなのです。
著者らは、この壊滅的な大量絶滅事件は「創造的破壊」(creative destruction)の一形態であり、ヘビがそれまで競合相手によって満たされていたニッチに新たに進出し、多様化することを可能にしたと述べています。
「現在生きているすべての生物は、1億年に一度の大災害を生き延びただけでなく、その余波の中で競争し、繁栄することができた種の子孫なのです。新生代での成功は、破壊に直面しても並外れた回復力を発揮することではなく、災害の後にチャンスを見つける能力によってもたらされているようです」と、論文の著者の一人であるNick Longrich氏は研究結果を記したブログを結んでいます。
Image Credit: Joschua Knüppe
Source: University of Bath、Nick Longrich Blog / 論文
文/吉田哲郎
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