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初期宇宙の「塵に埋もれた銀河」を2つ発見、アルマ望遠鏡の観測成果

sorae.jp / 2021年9月24日 20時41分

今回の成果を示した模式図。ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線での観測(左)で見えていた銀河(右下)とは別に、ハッブルでは見えなかった塵が豊富な銀河(右上)がアルマ望遠鏡による観測で見つかった(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope)

【▲ 今回の成果を示した模式図。ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線での観測(左)で見えていた銀河(右下)とは別に、ハッブルでは見えなかった塵が豊富な銀河(右上)がアルマ望遠鏡による観測で見つかった(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope)】

国立天文台、早稲田大学、広島大学の研究者を中心とした国際研究グループは、ビッグバンから10億年と経っていない130億年以上前の宇宙に存在していた塵が豊富な銀河を新たに2つ発見したとする研究成果を発表しました。今回の成果は、塵が豊富であるために見つかっていない初期宇宙の銀河が従来の予想以上に多い可能性を示唆しており、初期宇宙における銀河形成理論に大きな影響を与える発見とされています。

■「塵に隠されている普通の銀河」を偶然発見

国立天文台/早稲田大学の札本佳伸さんたち研究グループによって今回発見された銀河は、「REBELS-12-2」および「REBELS-29-2」と呼ばれています。このうちREBELS-12-2は約131億年前(赤方偏移z=7.35)の宇宙に存在していた銀河であり、「塵に埋もれた銀河」としては観測史上最も古いとされています。

札本さんたちはもともと「REBELS」(Reionization Era Bright Emission Line Survey)という大規模探査プロジェクトで観測された銀河の研究を行っていました。REBELSは130億年ほど前の宇宙に存在していた近赤外線で非常に明るい銀河40個を観測し、塵からの放射や炭素イオンの輝線(原子や分子が電磁波に残した痕跡)を探査することを目的としたプロジェクトです。

新たに見つかった2つの銀河は、REBELSの観測対象である「REBELS-12」および「REBELS-29」の近くで偶然見つかりました。研究グループによると、4つの銀河はいずれもアルマ望遠鏡によって塵の放射と炭素イオンの輝線が検出されているものの、「ハッブル」宇宙望遠鏡やヨーロッパ南天天文台(ESO)の「VISTA望遠鏡」による近赤外線の観測では「REBELS-12-2」と「REBELS-29-2」が検出されなかったといいます。この「近赤外線では見えない」という特徴が今回の発見におけるポイントです。

今回見つかった「REBELS-12-2」(左画像の下部)と「REBELS-29-2」(右画像の上部)の観測結果。ハッブル宇宙望遠鏡・VISTA望遠鏡による近赤外線(青)、アルマ望遠鏡による塵(オレンジ)と炭素イオン輝線(緑)の観測データを重ね合わせたもの。「REBELS-12」(左画像)と「REBELS-29」(右画像)では近赤外線が検出されているが、今回見つかった2つの銀河では検出されていない(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.)

【▲ 今回見つかった「REBELS-12-2」(左画像の下部)と「REBELS-29-2」(右画像の上部)の観測結果。ハッブル宇宙望遠鏡・VISTA望遠鏡による近赤外線(青)、アルマ望遠鏡による塵(オレンジ)と炭素イオン輝線(緑)の観測データを重ね合わせたもの。「REBELS-12」(左画像)と「REBELS-29」(右画像)では近赤外線が検出されているが、今回見つかった2つの銀河では検出されていない(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.)】

宇宙は膨張しているため、宇宙空間を進む光(電磁波)の波長は距離が長くなるほど伸びていきます。130億年前に銀河を発した時には可視光線(人の目で見ることができる波長の光)より波長が短い紫外線だったとしても、地球へ届く頃には波長が伸びて可視光線や赤外線になってしまう、ということになります。紫外線には塵に吸収・散乱されやすい性質があるため、研究グループが「塵に埋もれている」と表現するほど大量の塵が存在する銀河の場合、紫外線(地球に届く頃には可視光線や近赤外線になっている)では検出されにくくなります。

銀河の塵は恒星内部の核融合反応で作り出された炭素やケイ素などからできていて、恒星が進化して生涯を終えるまでの過程で外部に放出されます。新たな星が次々に生み出される星形成活動が活発な銀河では恒星の世代交代が進むうちに塵が多くなっていきますが、反対に、星形成活動がそれほど活発ではない銀河では塵が少なくなります。

研究グループによると、これまでの観測で発見された初期宇宙の「塵に埋もれた銀河」は、天の川銀河の1000倍以上というハイペースで星が形成されている稀な銀河に限られていたといいます。そのため、初期宇宙でも星形成活動が穏やかな銀河は塵も少なめで紫外線が吸収・散乱されにくく、地球では可視光線や赤外線の波長を使った観測で検出できると考えられていたといいます。

ところが、今回見つかった「REBELS-12-2」と「REBELS-29-2」は、130億年ほど前の宇宙でこれまでに見つかってきた多くの銀河と同じくらいのペースで星が形成されていたといいます。それなのに、この2つの銀河は「塵に埋もれている」ために近赤外線(銀河を発した時は紫外線)では見えません。このことから研究グループは、星形成活動が典型的な「普通の銀河」であるにもかかわらず豊富な塵が存在するために見つかっていない初期宇宙の銀河が、この他にも多数存在する可能性を指摘しています。研究を率いた札本さんは「今回見つかった銀河は、宇宙の非常に狭い領域から見つかったものであるため、氷山のほんの一角に過ぎないと考えています」と語ります。

こうした「塵に埋もれている普通の銀河」がどれくらい存在し、銀河全体の進化・形成にどのように影響してきたのかを理解するには今後の観測が必要とされており、研究グループではアルマ望遠鏡や今年12月に打ち上げ予定の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」による大規模な探査に期待を寄せています。研究に参加した広島大学宇宙科学センターの稲見華恵さんは「塵を大量に生産するにはある程度歳をとった星が必要なのに、ビッグバン直後という宇宙の極初期で、何がきっかけでどのようにして短時間で塵が生み出されたのか、これから解き明かしていきます」と語っています。

 

関連:死につつある銀河を「延命」させる現象をアルマ望遠鏡が初めて捉える

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.
Source: 国立天文台 / 早稲田大学
文/松村武宏

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