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「1年」が地球の1日よりも短いスーパーアースを観測、すばる望遠鏡などの観測成果

sorae.jp / 2021年9月29日 20時59分

自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターや東京大学の研究者からなるグループは、公転周期が地球の1日よりも短い太陽系外惑星「TOI-1634 b」と「TOI-1685 b」に関する研究成果を発表しました。研究グループは、このような「超短周期惑星」(公転周期が1日未満の惑星)がどのようにして誕生したのかを探る上で、2つの系外惑星は貴重な天体だと述べています。

■地球に似た超短周期惑星を研究する上で興味深い対象 地球(左)、TOI-1685 b(中央)、TOI-1634 b(右、図では「TOI-1684 b」と表記)のサイズ比較イメージ。低温の赤色矮星を公転しているTOI-1685 bとTOI-1634 bは赤っぽい光に照らされている様子が表現されている(Credit: 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター)

【▲ 地球(左)、TOI-1685 b(中央)、TOI-1634 b(右、図では「TOI-1684 b」と表記)のサイズ比較イメージ。低温の赤色矮星を公転しているTOI-1685 bとTOI-1634 bは赤っぽい光に照らされている様子が表現されている(Credit: 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター)】

今回の研究対象となった系外惑星は、「ペルセウス座」の方向約115光年先(TOI-1634 b)と約122光年先(TOI-1685 b)にあります。研究グループによると、直径はTOI-1634 bが地球の約1.8倍、TOI-1685 bが地球の約1.5倍で、質量はTOI-1634 bが地球の約10倍、TOI-1685 bが地球の約3.4倍とされており、両方とも地球より大きな地球型惑星であるスーパーアース(研究グループによると「直径が地球の約2倍以下、質量が地球の約10倍以下」の系外惑星を指す)に分類されています(※)。

今回注目されている公転周期、つまりその天体にとっての「1年」は、TOI-1634 bが0.989日、TOI-1685 bが0.669日(約16時間)とされています。2つのスーパーアースは太陽よりも軽くて表面温度が低い赤色矮星(M型星)を周回していますが、短い公転周期はこれらの系外惑星が恒星のすぐ近くを公転していることを意味しており、表面の平衡温度はTOI-1634 bが摂氏約650度、TOI-1685 bが摂氏約780度と推定されています。

研究グループによると、観測データの分析結果が示すサイズと質量をもとに系外惑星の内部組成を調べたところ、TOI-1634 bとTOI-1685 bはどちらも地球と同様に岩石や鉄を主体とした組成を持つことが推定されています。特に、TOI-1634 bは内部組成が地球に似ていることが知られる超短周期惑星としてはサイズ・質量ともに最大とされており、このような惑星が低温・低質量の恒星周辺で見つかったのは非常に興味深いといいます。

系外惑星の半径と質量の関係を示した図。既知の超短周期惑星は青と紫で示されている。赤で示されているTOI-1634 bとTOI-1685 bは、理論上推定される地球の組成に近いとされる(Credit: 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター)

【▲ 系外惑星の半径と質量の関係を示した図。既知の超短周期惑星は青と紫で示されている。赤で示されているTOI-1634 bとTOI-1685 bは、理論上推定される地球の組成に近いとされる(Credit: 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター)】

また、サイズと質量の関係からは、2つのスーパーアースが厚い水素の大気を持たないこともわかったといいます。惑星が形成される現場だと考えられている原始惑星系円盤には水素が豊富に存在しており、たとえば太陽系では円盤からガスを取り込んだ木星のような巨大惑星は水素を主成分とした大気を持っています。これに対し、TOI-1634 bとTOI-1685 bには形成当時からの原始大気が残されておらず、惑星の内部から放出されたガスでできた大気(二次大気)が形成されている可能性を研究グループは指摘しており、恒星の至近を公転する地球型惑星の大気の進化を研究する上でも興味深い観測対象だとしています。

研究グループは、TOI-1634 bとTOI-1685 bが地球から100光年ほどという比較的近いところに存在しており、低温の恒星を周回する超短周期惑星としては特に明るいことから、次世代の望遠鏡を使った観測に期待を寄せています。研究を率いた自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター/国立天文台ハワイ観測所の平野照幸さんは「今後、本研究で見つかった惑星系をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(筆者注:2021年12月打ち上げ予定)などで観測し、惑星大気や詳細な軌道等を調査することで、未だ謎の多い超短周期惑星の起源の解明に近づくことが期待されます」とコメントしています。

なお、今回の研究ではアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」や多色同時撮像カメラ「MuSCAT」(岡山県、カナリア諸島テネリフェ島、ハワイ諸島マウイ島の計3か所にある望遠鏡に設置)による系外惑星の「トランジット」の観測データと、国立天文台ハワイ観測所「すばる望遠鏡」の赤外線分光器「IRD(InfraRed Doppler)」による恒星の「視線速度」の観測データが用いられました。トランジットや視線速度については以下の関連記事をご覧下さい。

関連:35光年先の系外惑星を詳細に観測、ハビタブルゾーン内に新たな惑星が存在か

 

※…今年発表された別の研究グループによる論文では、TOI-1634 bは地球と比べて直径が約1.8倍・質量が約4.9倍と算出されています(R. Cloutier et al. 2021)。また、同様にTOI-1685 bは直径が約1.7倍・質量が約3.8倍と算出されている他に、その外側にトランジットが検出されない別の系外惑星候補(公転周期約9.02日)が存在する可能性も指摘されています(P. Bluhm et al. 2021)。各系外惑星の推定値や系外惑星候補の存在については、今度のさらなる観測と分析によって修正・確認される可能性があります。

Image Credit: 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター
Source: 国立天文台 / 自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター
文/松村武宏

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