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わずか数年で大きな変化。活動銀河の中心でジェットとガス雲が衝突する様子を観測

sorae.jp / 2021年10月13日 21時38分

工学院大学/国立天文台の紀基樹さん、山口大学の新沼浩太郎さんたち国際研究グループは、国内外の電波望遠鏡を使って活動銀河「3C 84」を詳しく観測した結果、3C 84の中心に存在するとみられる超大質量ブラックホールから噴出したジェットが高密度のガス雲に衝突し、その動きがせき止められた様子を初めて捉えることに成功したとする研究成果を発表しました。

3C 84は「ペルセウス座」の方向およそ2億3000万光年先にある「ペルセウス座銀河団」の中心部分に位置する銀河で、「NGC 1275」とも呼ばれています。研究グループによると、今から16年前の2005年に3C 84の中心部分から新たなジェットの噴出が始まった様子が観測されており、「電波ローブ」(電波の波長で見ることができる広がりを持った構造)が形成された瞬間が捉えられて研究者の注目を集めたといいます。

■誕生したばかりの電波ローブが数年単位で変化する様子を観測 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した活動銀河「3C 84」(NGC 1275)。画像の幅は約26万光年に相当する(Credit: NASA, ESA and Andy Fabian (University of Cambridge, UK))

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した活動銀河「3C 84」(NGC 1275)。画像の幅は約26万光年に相当する(Credit: NASA, ESA and Andy Fabian (University of Cambridge, UK))】

電波ローブは活動銀河核(狭い範囲から強い電磁波を放つ銀河中心核)から双方向に噴き出すジェットの末端に見られる構造で、噴出元の銀河よりも大きなサイズまで広がることもあります。研究グループによると、2005年に誕生の瞬間が観測された3C 84の電波ローブは超大質量ブラックホールから4光年しか離れていないほど小さなもので、地球からは片側の電波ローブが3C 84の銀河中心核を取り囲む円盤に隠されていてほとんど見ることができないといいます。

研究グループは日本と韓国の電波望遠鏡7台が連携して高解像度の観測を実現する「日韓合同VLBI観測網」(KaVA※)を利用して、3C 84の若く小さな電波ローブの詳細な観測を行いました。研究グループによると、当初は電波ローブのなかでも特に明るく見える「ホットスポット」と呼ばれる部分が移動し続ける様子が観測されていたものの、2016年の後半~2017年の末頃までの約1年間はホットスポットが動きを止めて同じ場所に停滞。2018年になると再び動き始めたものの、それまで観測されていたホットスポットが消滅し、電波ローブの形状がゆがんで暗くなる様子が明らかになったといいます。

※…「KVN and VERA Array」の略。KVNは韓国天文研究院の「韓国VLBIネットワーク」、VERAは国立天文台の「VLBI Exploration of Radio Astrometry」を指す

3C 84で誕生した電波ローブの観測結果を示した図。C1はジェットの根元、C3はホットスポットの場所を示す(Credit: 工学院大学, 国立天文台)

【▲ 3C 84で誕生した電波ローブの観測結果を示した図。C1はジェットの根元、C3はホットスポットの場所を示す(Credit: 工学院大学, 国立天文台)】

こちらは2012年7月から2020年1月にかけて観測された3C 84の中心部分の様子です(上段は2012年7月4日~2015年12月5日、下段は2016年6月10日~2020年1月3日)。C1はジェットの根元の部分、C3はホットスポットの位置を示しています。順調に移動(南下)し続けていたホットスポットが停滞し、再び動き始めた直後に消えていったことがわかります。

また、こちらの動画では電波ローブの変化がアニメーションで示されています(0:09~0:46)。2億光年以上先にある活動銀河中心の非常に狭い領域(動画内のスケールバーの長さはわずか1光年)が、数年という短いタイムスケールでダイナミックに変化する様子が見事に捉えられています。

▲3C 84中心部分の変化を示した動画(Credit: 国立天文台水沢VLBI観測所 秦 和弘)▲

研究グループは、観測によって判明したホットスポットの停滞と消滅、それに続いて生じた電波ローブの形状や明るさの変化について、超大質量ブラックホールから噴出したジェットが高密度のガス雲と衝突した結果であり、この衝突が電波ローブの成長過程に大きく影響したものと考えています。

研究を率いた紀さんは「ホットスポットがおよそ1年間も動きを止めている観測データを目の当たりにし、まるで宇宙における交通事故の現場を目撃したようで、とても驚きました」、研究に参加した新沼さんは「今後はさらに、東アジア全域とイタリアの電波望遠鏡群による地球サイズ規模のVLBI観測網で、この天体の数奇な成長過程を詳細に観察し、活動銀河核の謎の解明に迫りたいです」と語っています。

 

関連:ブラックホールが撮影された楕円銀河「M87」地上と宇宙から同時観測した成果が発表される

Image Credit: 工学院大学
Source: 工学院大学
文/松村武宏

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