天の川銀河中心部からの謎の電波を検知 奇妙な点滅・増減を繰り返している
sorae.jp / 2021年10月28日 20時32分
オーストラリアのシドニー大学は10月12日、シドニー大学物理学部博士課程の学生であるZIteng Wangさん率いる研究チームが、ASKAP(Australian Square Kilometre Array Pathfinder)電波望遠鏡の観測データを使って、私達の天の川銀河の中心部から奇妙な点滅・増減を繰り返す謎の電波がやってきていることを検知したと発表しました。この電波の特徴は既知の変光する電波源とは一致せず、この電波を放射している天体については全く正体不明だといいます。
研究チームが今回検知した電波には奇妙な特徴がいくつかあります。
まず、不規則に点滅を繰り返し、その強さも弱くなったり強くなったり不規則に変動します。その強さの変動の幅は100倍ほどにもなるといいます。
また、とても強く偏光していて、しかもその偏光の振動の方向がクルクルと回転しているというのです。なお、光は波としての性質を持っていますが、自然光があらゆる方向に振動しているのに対して、偏光は振動の方向が一方向にそろっている特殊な光です。
研究チームもこのように奇妙な電波を見たのは初めてだといいます。
研究チームは、2020年に9ヶ月をかけて「6回」この電波の観測に成功しましたが、他の電波望遠鏡を使って、追加の観測を行おうとしたところ、上手くいきませんでした。
そこで、研究チームは、より高い感度を誇るMeerKAT電波望遠鏡を使うことで、ようやく追加の観測に成功しました。しかし、今回の観測で観測された電波は前回観測された電波とは全く異なった振る舞いをしました。前回の観測では電波は数週間に渡って断続的に続いたのに対して、今回の観測では電波はたった1日で消えてしまったのです。
このように変光する電波源にはパルサー、超新星爆発、太陽フレア、高速電波バーストなどさまざまなものがありますが、この電波の特徴は既知の変光する電波源からの電波の特徴とは一致しませんでした。つまり、この電波を発生させた天体については全く正体不明というわけです。
研究チームでは、次世代電波望遠鏡スクエア・キロメートル・アレイ電波望遠鏡が稼働すれば、この謎を解き明かすのに、大きな助けになってくれるのではないかと期待しています。
Image Credit: the University of Sydney./Sebastian Zentilomo.
Source: シドニー大学
文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)
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