太陽系外惑星の変形を初めて検出! 欧州の宇宙望遠鏡「ケオプス」の成果
sorae.jp / 2022年1月13日 17時0分
ポルトガル天体物理・宇宙科学研究所(IA)/ポルト大学のSusana Barrosさんを筆頭とする研究グループは、「ヘルクレス座」の方向およそ1200光年先にある太陽系外惑星「WASP-103b」について、恒星(主星)の重力がもたらす潮汐力によってラグビーボールのように歪んでいることが明らかになったとする研究成果を発表しました。今回の研究で観測データが用いられた宇宙望遠鏡「CHEOPS(ケオプス)」を運用する欧州宇宙機関(ESA)によると、系外惑星の変形が検出されたのは今回が初めてのこととされています。
■潮汐力によってラグビーボール状に変形、主星による加熱等で膨張しているとみられるWASP-103bは木星と比べて質量が約1.5倍、半径が約2倍ある系外惑星で、太陽よりも一回り大きな恒星「WASP-103」(太陽と比べて質量は約1.2倍、半径は約1.7倍、表面温度は摂氏約200度高い)を公転しています。WASP-103bは主星であるWASP-103から0.02天文単位(地球から太陽までの距離の2パーセント)ほどしか離れておらず、その公転周期(WASP-103bにとっての「1年」)は地球の1日弱という短さで、表面温度は摂氏2000度を上回ると推定されています。
人類はすでに4800個以上の系外惑星を発見しており、WASP-103bのように主星のすぐ近くを公転する系外惑星が幾つも見つかっています。ESAによると、このような系外惑星は主星の重力がもたらす潮汐力によって変形しているのではないかと天文学者たちは予想していたものの、今まではその様子を捉えることができなかったといいます。
研究グループは今回、「ハッブル」や「スピッツァー」といった宇宙望遠鏡によってすでに得られていた観測データと、2019年12月に打ち上げられたESAの宇宙望遠鏡「ケオプス」によって得られた新しい観測データを組み合わせて、WASP-103bの性質を調べました。その結果、WASP-103bが潮汐力によって引き伸ばされ、ラグビーボールのような形に歪んでいることが突き止められたのです。冒頭でも触れたように、系外惑星の変形が実際に検出されたのは今回が初めてだといいます。
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また、研究グループはケオプスの観測データをもとにWASP-103bの内部構造を推定しており、WASP-103bの内部は木星に似ている可能性が示唆されるといいます。研究を率いたBarrosさんは、原則として系外惑星の質量が木星の1.5倍であるならばそのサイズは木星とほぼ同じになると予想されることから、WASP-103bは主星による加熱もしくは何らかのメカニズムによって膨張しているはずだと言及。内部構造をより詳しく調べることができれば、WASP-103bが膨張している理由だけでなく、コアの大きさをもとにWASP-103bの形成史をより良く理解することにつながるといいます。
いっぽう、新たな謎も浮上しています。発表によると、主星の近くを公転する木星サイズの系外惑星は、主星との重力を介した相互作用によって徐々に公転周期が短く(軌道が小さく)なっていき、最終的には主星に落下することが考えられるといいます。ところが、WASP-103bの観測結果は公転周期が長くなりつつある可能性を示しており、予想とは反対にWASP-103bは主星から遠ざかりつつあるかもしれないというのです。
研究グループはWASP-103bの軌道の変化をもたらし得る潮汐力以外の要因として、WASP-103bの軌道の形状やWASP-103の伴星などを想定して分析を進めたものの、原因を突き止めることはできませんでした。WASP-103bの公転周期が実際には短くなりつつある可能性も残されていることから、詳細な内部構造の分析とあわせて、研究グループは今後のさらなる観測に期待を寄せています。
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Image Credit: ESA
Source: ESA
文/松村武宏
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