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ノースロップ・グラマン「シグナス補給船」打ち上げ成功 日本の実験機器・超小型衛星も搭載

sorae.jp / 2022年2月27日 11時0分

ノースロップ・グラマンとアメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間2月19日、無人補給船「シグナス」運用17号機の打ち上げに成功しました。シグナス補給船には国際宇宙ステーション(ISS)へ届けられる科学実験器具や宇宙飛行士の生活用品など、合計3800kgの物資が搭載されています。

ワロップス飛行施設から打ち上げられる「シグナス」補給船を搭載した「アンタレス」ロケット(Credit: NASA Wallops/Patrick Black)

【▲ ワロップス飛行施設から打ち上げられる「シグナス」補給船を搭載した「アンタレス」ロケット(Credit: NASA Wallops/Patrick Black)】

シグナス補給船運用17号機を搭載したノースロップ・グラマンの「アンタレス」ロケット(Antares 230+)は、アメリカ東部標準時2022年2月19日12時40分に、ヴァージニア州のNASAワロップス飛行施設・中部大西洋地域宇宙基地0A射点から打ち上げられました。シグナス補給船は打ち上げから約9分後に軌道へ投入されたということです。

その後、シグナス補給船は物資の輸送先であるISSに接近。アメリカ東部標準時2月21日4時44分、ISSに滞在中のRaja Chari(ラジャ・チャリ)飛行士が操作するロボットアーム「カナダアーム2」にキャッチされ、ISSの第1結合部「ユニティ」の下部に結合されました。

2022年2月21日時点におけるISSの構成。シグナス補給船運用17号機(Cygnus-17)が下部に結合されている(Credit: NASA)

【▲2022年2月21日時点におけるISSの構成。シグナス補給船運用17号機(Cygnus-17)が下部に結合されている(Credit: NASA)】

このミッションはノースロップ・グラマンとNASAが結んだ「商業補給サービス(CRS)」の契約下で実施され、合計3800kgの物資がISSに輸送されました。物資の内訳は飛行士の生活用品が1352kg、科学機器が896kg、船外活動で用いられる道具が60kg、機体ハードウェアが1308kg、コンピューター類が35kgとされています。これらは海外の物資や科学機器ばかりではなく、日本の実証実験機器や大学が開発した超小型衛星も含まれています。

まず、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と日立造船株式会社が開発中の「全固体リチウムイオン電池」は、世界で初めて宇宙における全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた実証実験を実施するためにISSへ輸送されました。

JAXAによると、現在宇宙で使用されているリチウムイオン電池は内部に液体を使用しているなどの理由で、真空かつ温度差が激しい宇宙環境下では使用されず、人工衛星の内部などで用いられています。全固体リチウムイオン電池は、このように厳しい宇宙環境下でも使用できる電池として開発が進められています。

全固体リチウムイオン電池のサンプル(Credit: 日立造船株式会社)

【▲ 全固体リチウムイオン電池のサンプル(Credit: 日立造船株式会社)】

次に、九州工業大学、原田精機株式会社、株式会社アドニクスが共同開発した超小型衛星「KITSUNE」も輸送されました。KITSUNEはISSの日本実験棟「きぼう」から放出された後に、地球観測用のカメラによる画像撮影(分解能5mクラス)や、Cバンド通信機による高速通信といった実証実験を行う予定です。

九州工業大学によるとKITSUNEのサイズはCubeSat規格の「ワイド6U」(W6U、約10×20×30cm)で、同大学にとって22機目に打ち上げられた衛星となります。また、大学や学術機関が運用する小型衛星・超小型衛星の数において、同大学は4年連続で世界一位の実績を持つとされています。

九州工業大学の超小型人工衛星「KITSUNE」(Credit: 九州工業大学)

【▲ 九州工業大学の超小型人工衛星「KITSUNE」(Credit: 九州工業大学)】

今回打ち上げられたシグナス補給船は物資輸送だけでなく、補給船のエンジンを稼働させてISSの軌道を修正するリブースト(軌道上昇)にも用いられる予定です。リブーストはこれまでロシアの「プログレス」や欧州の「ATV」といった無人補給船で行われたことがありますが、シグナス補給船がリブーストに用いられるのは今回が初となります。なお、2018年に実施されたシグナス補給船運用9号機のミッションでは、リブーストのテストが実施されています。

なお、歴代のシグナス補給船には有人宇宙飛行に多大な貢献を果たした人物の名前が付けられてきました。今回打ち上げられた運用17号機には、スペースシャトルで3回の飛行を経験し、述べ41時間に渡る船外活動を通してISSの建設に従事したPiers Sellers(ピアーズ・セラーズ)氏の名前が付けられています。2011年に宇宙飛行士を引退したピアーズ氏はNASAのゴダード宇宙飛行センターで研究を続けましたが、2016年に亡くなっています。

 

 

Source

Image Credit: NASA Wallops/Patrick Black, JAXA/日立造船株式会社, 九州工業大学 NASA - Overview for Northrop Grumman's 17th Commercial Resupply Mission NASA - Northrop Grumman Sends NASA Science, Cargo to International Space Station SpaceNews - Antares launches Cygnus cargo spacecraft to ISS Northrop Grumman -17th Cygnus, named in honor of astronaut Piers Sellers, will deliver critical supplies to astronauts JAXA - 宇宙での全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた  実証実験の実施を決定~2021年秋以降に「きぼう」日本実験棟に向けて打ち上げ予定~ 九州工業大学 - 九工大と企業の共同開発 超小型衛星「KITSUNE」が2月20日打上予定!

文/出口隼詩

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