去る3月12日に大気圏へ突入。地球衝突前に発見された史上5例目の小惑星「2022 EB5」
sorae.jp / 2022年3月20日 21時26分
こちらはチェコのクレチ天文台で撮影された小惑星「2022 EB5」です(モノクロ画像の白黒が反転されているため、星は黒く見えています)。2022 EB5は背景の星々に対して高速で移動していたので、1本の線のように写っています。
欧州宇宙機関(ESA)によると、この画像が撮影されてから13分後に2022 EB5は地球の大気圏へ突入しました。ESAによれば地球には毎日40~100トンの物質(その大半は大気圏で燃え尽きる微小な粒子)が衝突していると推定されていますが、地球へ衝突する前に発見された天体は今まで4例しかありませんでした。2022 EB5はその5例目となったのです。
2022 EB5は2022年3月12日4時24分(日本時間、以下特記無き限り同様)、ハンガリーのコンコリー(コンコイ)天文台が運用するピスケシュテト天文台の60cmシュミット望遠鏡を用いた観測によって、夜空を高速で移動する明るい新天体として発見されました。発見者である天文学者のKrisztián Sárneczkyさんは、スミソニアン天体物理観測所が運営する小惑星センター(MPC)へ発見から14分後に4回分の観測データを報告。その後も観測を継続して、さらに10回分の観測データをMPCに提出しました。
新天体の観測データは、ESAの「Meerkat」やアメリカ航空宇宙局(NASA)の「Scout」といった、世界中の衝突リスク評価システムによってリアルタイムに分析されています。Sárneczkyさんの観測データを分析した衝突リスク評価システムは、後に2022 EB5という仮符号が付与されるこの天体が、間もなく地球に衝突すると判断。その場所はアイスランドから北に数百km離れた北大西洋北部で、衝突時刻は6時21分~25分と予測されました。
2022 EB5はSárneczkyさんによる発見からほぼ2時間後の3月12日6時23分頃、アイスランドの北・グリーンランドの東に浮かぶヤンマイエン島の南方上空で大気圏に突入しました。陸地から遠く離れた場所での出来事でしたが、その様子は国際的な超低周波音検出器のネットワークによって捉えられていました。NASAのジェット推進研究所(JPL)やESAによると、2022 EB5は直径約2m、大気圏突入時に放出されたエネルギーはマグニチュード4.0の地震に相当すると推定されています(超低周波音検出器の測定データをもとに算出)。
冒頭でも触れたように、地球衝突前に発見された小惑星は2022 EB5を含めて5例しかありません。最初の観測例は2008年10月に発見された「2008 TC3」で、地上に落下した破片がスーダンで回収されています。
小惑星を衝突前に見つけるのが難しいのは、そのサイズに理由があります。小惑星をサイズ別に分類すると、サイズが大きな小惑星ほど地球に衝突する頻度は低く、サイズが小さな小惑星ほど頻度は高くなります。しかし、サイズが小さな小惑星は地球にかなり近付くまで明るくならないため、接近していることに人類が気が付くことなく大気圏へ突入するものが多いのです。
大気圏で燃え尽きるような微小な天体であれば流星として楽しめるものの、直径が10mを上回るような小惑星となると地上への影響が無視できなくなってきます。2013年2月にロシアのチェリャビンスク州上空でエアバースト(強力な爆風)を引き起こし、1500名以上が負傷する原因となった天体は直径十数mと推定されていますが、その存在は大気圏に突入するまで気付かれませんでした。
2008年以降、わずか5例とはいえ衝突直前の小惑星が見つかるようになったのは、人類の観測技術向上を物語っています。ESAではプラネタリーディフェンス(※)の一環として自律的に観測を行える望遠鏡「フライアイ(Flyeye)」の建設を進めており、今後は衝突前の小惑星がより多く見つかることが期待されます。
※…深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測し、いずれは小惑星などの軌道を変えて災害を未然に防ぐための取り組み
関連:危険な小惑星を察知するために。新技術を実証するESAの望遠鏡が完成
Source
Image Credit: ESA ESA - Fifth asteroid ever discovered before impact NASA/JPL - NASA System Predicts Impact of Small Asteroid文/松村武宏
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