木星の衛星エウロパ、表面から比較的浅い場所に液体の水がある可能性
sorae.jp / 2022年5月10日 21時14分
【▲ 木星探査機「ガリレオ」が撮影した衛星エウロパ(Credit: NASA/JPL-Caltech/SETI Institute)】
こちらはアメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ガリレオ」が撮影した木星の衛星エウロパです。
17世紀にガリレオ・ガリレイが発見した「ガリレオ衛星」と呼ばれる4つの衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)のひとつであるエウロパは、土星の衛星エンケラドゥスなどとともに、氷の外殻の下に内部海が存在するのではないかと予想されている天体のひとつ。その表面では内部海からの水もしくは氷殻内部にたまった水が、間欠泉として噴出していると考えられています。
次の画像は、探査機ガリレオが2000km離れた場所から撮影したエウロパの表面。約14km×17kmという狭い範囲が捉えられています。画像の右上から左下にかけて、よく目立つ2本の稜線が平行に伸びているのがわかります。
![【▲ 木星探査機ガリレオが撮影したエウロパの二重稜線(Credit: NASA/JPL/ASU)】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2022/05/NASA-JPL-Europa-double-ridges-PIA00589.jpg)
【▲ 木星探査機ガリレオが撮影したエウロパの二重稜線(Credit: NASA/JPL/ASU)】
NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、この二重稜線の幅は約2.6km、高さは約300mあります。エウロパでは長さ数百kmにも達する二重稜線が表面のいたるところに分布していますが、どうやってこのような地形が形成されたのかは、今までよくわかっていませんでした。
スタンフォード大学の大学院生Riley Culbergさんを筆頭とする研究グループは、エウロパの二重稜線が表層下の比較的浅いところにある液体の水によって形成された可能性を示した研究成果を発表しました。つまり、エウロパでは液体の水が内部海だけでなく、その上にある氷殻の内部にも存在する可能性があるというのです。
■二重稜線は氷殻にたまった水による複雑なプロセスを経て形成される可能性次の画像は、研究グループが予想したエウロパにおける二重稜線の形成プロセスを示した断面図です。
まず、エウロパの内部海から水が上昇してくるなどして、氷殻(厚さ約20~30km)の内部にある多孔質の(すき間が多い)氷の層に貯水層が形成されます(a)。貯水層の水の一部は氷殻の表層にひび割れが生じるとそこに入り込み(b)、やがて凍って貯水層を左右に分ける仕切りとなります(c)。すると、圧力を受けた水は構造が弱い部分へと仕切りに沿うようにして両側から浸透して氷を押し上げ、氷殻の表面には二重の稜線が形成されることになります(d)。
![【▲ 研究グループが提唱したエウロパの二重稜線形成プロセス(Credit: Culberg et al.)】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2022/05/formation-double-ridge-Europa-41467_2022_29458_Fig4_HTML.jpg)
【▲ 研究グループが提唱したエウロパの二重稜線形成プロセス(Credit: Culberg et al.)】
これと同じようなプロセスで形成された二重稜線は、地球のグリーンランド北西部にも存在するといいます。JPLによると、2015年から2017年にかけてNASAが実施した空中からの氷貫通レーダー観測により、グリーンランド氷床に二重稜線が存在していて、どのようにして発達したのかが明らかになったといいます。
研究に参加したスタンフォード大学のDustin Schroeder准教授は、今回提唱した二重稜線の形成プロセスは複雑であり、グリーンランドに類似物がなければ想像もできなかっただろうと語っています。ただし、エウロパでは内部海から氷殻内部へ水が上昇してくると予想されているのに対して、グリーンランドでは氷床の表面にある湖や小川から内部へと水が浸透することで貯水層が形成されるという違いがあります。
地下深くから上昇してきた水が、ある時は間欠泉としてエウロパの表面から噴出し、ある時は氷殻にたまって地形を変えたりする。まるで地球の火成活動を思わせますが、2014年にはエウロパにも地球のようなプレート運動が存在していて、氷のプレートが沈み込んでいる証拠を発見したとする研究成果も発表されています。エウロパの凍てついた氷殻は、従来の予想以上にダイナミックな活動をしているのかもしれません。
なお、今回の成果は、2024年の打ち上げ・2030年の木星到着が計画されているNASAの無人探査機「Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)」によるエウロパの探査に活かされることが期待されています。エウロパ・クリッパーには表面から深さ30kmまでを探査できる氷貫通レーダー「REASON」が搭載されており、存在が予想されている内部海、氷殻の厚さ、氷殻内部の構造などが調べられる予定です。
![【▲ エウロパを観測するエウロパ・クリッパーの想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2021/06/europa-clipper-artist-impression-Dec2020.jpg)
【▲ エウロパを観測するエウロパ・クリッパーの想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】
関連:エウロパの内部海には酸素がある? 表面の“カオス地形”が関係か
Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SETI Institute, NASA/JPL/ASU, Culberg et al. NASA/JPL - Greenland Ice, Jupiter Moon Share Similar Feature スタンフォード大学 - Stanford researchers’ explanation for formation of abundant features on Europa bodes well for search for extraterrestrial life Culberg et al. - Double ridge formation over shallow water sills on Jupiter’s moon Europa文/松村武宏
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